JR因美線に沿って、鳥取県との県境方面へと向かった。次の目的地は加茂町にある線香水車である。
線香水車とは、線香を作るためにスギの葉を粉末にするための水車をいう。加茂町の線香水車は、イラストレーター原田泰治の風景画の題材になり、ふるさと心の風景シリーズという記念切手のデザインにも採用された著名な水車小屋だ。
水車は県道から土橋を渡った対岸の一軒家の場所にあるという。この土橋は、原田泰治の画にも描かれている。
ところが水車小屋があったと思われる場所に行ってみると、がれきの山があるばかりであった。
近くに住んでいるおばあちゃんに話を聞くと、去年の秋に取り壊されたらしい。だとすれば2002年の秋に撤去されたことになるが、おばあちゃん自身、記憶がはっきりしないようなことも言っていたので、多少は年代はずれるかもしれない。
水車小屋があった場所には、搗き臼が埋められたまま残っていた。
搗き臼の数はざっと数えて16個はある。すごい規模の産業水車だったのだろう。
見てみたかった気もするが、来るのが1年遅かったのだ。これは自分の行動が遅かったのだからしかたがない。
でもこうして水車の跡を見ることで、当時のイメージを思い描くのもそれはそれでよい体験でもある。
導水の様子を見ていこう。
水車がかけられているのは、用水路からさらに分水した水路。水車小屋のすぐ上流になる。
取水地点からわずかに高度をかせいで、深い堀へと落ち込んでいく。
落ち込んでいく斜面は円弧を描いていることから、そこに胸掛けの水輪があったのだろう。
使用する水量も多く、さきほど見た製紙水車と似ている。
この水車について年代を追ってみると、
- 1983年に原田泰治によって描かれる。
- 2002年に取壊し。
- 2008年に記念切手になる。
つまり切手になったときには、すでに取り壊されていたわけで、なんとも切ない気持ちになる。
(2003年04月30日訪問)