岡山県央の有数の観光洞、備中
備中鍾乳穴は、平安時代に編纂された歴史書『日本三大実録』に、鍾乳石を薬として採掘したという記述があるといい、史料に確認できる日本最古の鍾乳洞だといわれている。
広い駐車場と売店。
いかにも観光地という感じ。悪くないね。
入場料は700円。
洞窟は全長700mが確認されており、そのうち300m分が観光洞として整備されている。
おそらく本格的に探索すれば、さらに長い穴が見つかるのではないか。
洞の入口へは駐車場の場所から徒歩で坂を下っていく。その場所を国土地理院の地図で見ると、左図のようになっている。
┴┴┴┴┴ のような等高線があるのがわかるだろうか。これは、棘がでている方向が低くなっていると読む。つまり鍾乳穴の洞口はすり鉢状の穴の底にあるのだ。
石灰岩地質の土地にできるこのような窪地を「ドリーネ」という。雨水による侵食や鍾乳洞の陥没によって生まれるカルスト独特の地形だ。この窪地に流れ込んだ雨水はすべて鍾乳洞に吸い込まれ、水が溜まることはない。
洞口へ下りていく道ばたにも小さな鍾乳洞が口を開けている。
また案内板によればこの周辺はヒメボタルの棲息地だという。ホタルの多くは幼虫時代を陸上で過ごし、カタツムリを捕食する。石灰岩地帯ではカルシウムが補給しやすいためかカタツムリの棲息に適しており、結果としてホタルも棲息するのだろう。ヒメボタルはホタルのなかでは比較的大型で光が強く、ストロボライトみたいにピカッ、ピカッと光るのが特徴。いつか紹介できればよいのだが・・・。
徒歩5分ほどで洞口へ到着。
入口は縦に長い割れ目になっていて、ドリーネの最深部から少し高くなっている。これは自然の状態なのか、あるいは豪雨の際に洞内に水が流れ込まないように後付けで作られた段差なのかはよくわからない。
洞口からはゆるい下り坂。
少し進むと、天井の高い大空間へと至る。
洞内はさまざまな色のライトで照らされている。
観光洞にはこうしたカラー照明をしているところがけっこうある。正直、本来の鍾乳石の色がわからないのであまりいいこととは思えないが、一方でこういう昭和の観光地っぽい要素は嫌いではないので、複雑な心境だ。
成層火山のような巨大な石筍。
「洞内富士」と呼ばれている。
「七町田」と呼ばれる、きれいなリムストーン。
ストロボを焚いて撮影するとこんな感じになってしまう。
備中鍾乳穴は洞内の温度が低いのも特徴で、人いきれが湯気のようになってしまうのだ。
洞窟内でストロボ撮影をするときは、自分が歩いた後ろを撮ると湯気にストロボ光が反射して画面が白くなってしまうし、歩く前方を撮影するときも息を止めないとうまく写せない。
天井はとても高い。
途中タラップがあり、少し上の穴へ上っていく。
部分的に天井が低い場所もあり、かがまないと通れない。
こうした場所で、下部を掘り抜いてラクに歩けるように加工してしまっている鍾乳洞があるが、それはいただけないと思う。
二次生成物は豊富。
それぞれには名前が付けられている。
マリア岩と呼ばれる石筍。
備中鍾乳穴の二次生成物としては最大の見どころ、五重塔。
22層になっているそうで、観光洞の鍾乳石の層の数としては最大だそうだ。
(2003年05月01日訪問)