御前の時鐘

詳細は不明だがわりと新しそう。

(岡山県高梁市御前町)

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御前神社の参道に時鐘があった。

時鐘とは時間を告げるだけのために設置された鐘つき堂だ。今回の旅では倉敷に同様のものがあった。

時鐘は主に江戸時代に設置された。江戸時代の時刻は今のように1日を等分したものではなかった。夜明けと日没のあいだを分割したため、季節によって時刻の刻みが違っていた。そのため庶民に時刻を知らせるために作られたのが時鐘である。

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たぶん多くの町にこうしたものが作られたのだろう。私が大学時代を過ごした埼玉県川越市には有名な時鐘がいまもあるし、私が幼少期を過ごした前橋市の清光寺にもそれっぽいものがあった。

ただし多くは戦災や区画整理などで消滅し、いまおそらく国内には100件は残っていないだろう。

この時鐘も歴史的には確実に存在したもののようだ。市の観光案内によれば、梵鐘を戦時中に供出したというから、少なくとも戦前まで残っていたことは間違いない。

ただし現在の時鐘の建築はかなり新しそうに見える。材木の肌には風化の度合いも少ないし基壇の石垣も神社の参道の石垣に比べると色が真新しい。戦後、立て替えたときに古い部材を交換し、基礎工事などもやり直したのではないだろうか。

(2003年05月03日訪問)

建築用語図鑑 日本篇

– 2019/4/25
中山繁信 (著), 杉本龍彦 (著), 長沖 充 (著), 蕪木孝典 (著), 伊藤茉莉子 (著), & 2 その他
日本の建築の中から主要なものを「キーワード(建築用語)」とともに選び出し、その意味や成り立ち・歴史を楽しみながら学ぶことができる、大人の図鑑です。

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