イーネィチャンダ僧院

平和と繁栄の名を冠したさびしい僧院。

(ミャンマーカレン州パアン)

さて、日曜日である。パアン滞在期間の限られた休日なので有意義に過ごしたいところだが、先週の前半風邪を引いての病み上がりで、あまり無理もできない。

今回の訪緬ではいくつかの山登りをするつもりなのだが、きょうはそういうハードな観光は避けて近場でお茶を濁そうと思う。近場で気になっている場所というと、パアン市から見てサルウィン川の対岸の地域である。このあたりはほとんどが未踏地域だ。④のパアプゥ山だけは以前に訪れたが、市内から渡舟で行ったために対岸での足がなく、あまり動き回ることもできなかった。

きょうはこの地域を下図のように一巡りしようと思う。

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①はパアン市街。横を流れるのは大河サルウィン川。川の対岸②はミャインカレイ村になるが、橋は5km以上下流にあるので対岸へ行くだけで10kmの移動が必要。

最初に目指すのは、②の丘陵地帯にあるパゴダ群。この付近の丘陵にはいくつもの寺らしきものがあることはわかっているのだが、③に警察軍のキャンプがあるため、なんとなく近寄りがたい雰囲気があって未踏となっていた。

その後は④のパアプゥ山へ向かう。パアプゥ山頂も未踏でいつか再チャレンジしなければとは思うが、今回は登山ではなくその山麓にある別の寺を調べる。

そこからはサルウィン川の東岸を進んで⑤のモゥクディ山を目指す。衛星写真から山の西麓に道がないのは間違いないので、東麓を巻くつもりだが、川岸まで落ち込む急斜面のジャングルのため衛星写真では道があるかどうか判別できない。うまく山を巻ければ、山の北端部に鍾乳洞があるはずだ。(ミャンマー人が遊びに行ったSNSの投稿写真の周囲の風景から推測。)ここまでが、きょうの最低限のクリア目標となる。

その先は時間次第。時間がなさそうなら同じ経路を戻る。時間がありそうなら、⑥~⑨の丘陵をチェックし、⑩付近のワボドゥ村で国道(AH1号線)に出て、広い舗装道でパアンまで戻るつもりだ。丘陵群のうち⑥の山は登山できそうだがパゴダらしきものは見当たらない。⑦の山は周囲が湿地で取りつく道路がないのでたぶん寺もないだろうと思われる。⑧の山は⑥と重なって見えているが別の山体である。尾根に点々とパゴダがあるのがわかっている。⑨の山はアクセス道路があり人の気配もあるが、建設中の寺なのか採石場なのかはっきりしない。これらを可能ならば確認するつもりだ。

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まずサルウィン・パアン橋経由でミャインカレイ村へと渡り、警察軍キャンプの取り付け道路へと入った。

ラテライトという熱帯土壌のため、道路が真っ赤だ。衛星写真でもこの道は際立って赤いのがわかるほど。寺へ向かっているとはいえ、すでに軍用地内に立ち入っている可能性もあり、不安な風景である。

しばらく走ると、10ヘクタールはあろうかという広大な荒れ地に出た。この荒れ地のまわりにいくつかの寺も見える。

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これまで見たカレン州の荒れ地は草や潅木が茂っていたが、このような完全な砂漠化した荒れ地は初めて見た。

この荒れ地は緩い丘陵の頂上付近を占めていて、流出した表土が簡単には復元しないのかもしれない。何が原因でこんな場所ができてしまったのか。

『マッドマックス』どころか、『オデッセイ(火星の映画)』のロケができそう。この世のものとは思えない風景だ。

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ところどころのくぼ地には粘土質の土がたまり、ひび割れていた。雨季には恐ろしい泥沼地獄と化しそう。

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周囲には寺の建物が点在していて、いくつの寺があるのかははっきりしない。

とりあえずあの寺を目指そうか。

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決まった道はない。

砂漠の中に人が通った場所が踏み分け道になっているだけだ。

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寺に付属するパゴダと思われる。

下の建物はおそらく仏殿だろうと思われる。

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山門や塀など、境内の範囲を示すものはない。

僧房(左)と講堂(右)が主だった堂宇だった。

寺の名前は、僧房の壁に書かれており「イーネィチャンダチャウン」。「チャウン」は学校。「イーネィチャンダ」は「平和と繁栄」という意味らしい。

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講堂はなぜか内陣が手前、入口が奥になるように建っていた。

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この寺に所属すると思われるパゴダ。

球体の本体に卍のマークがある。以前に見たボーダコッパゴダと同じ由来のものだろう。

本体が球体だけでなく、基壇も円形なのが特徴である。現時点では詳細は不明だが、どうもこの地域に多そう。

(2016年12月18日訪問)

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田上太秀 (監修)

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