パプン街道チャウタロゥ村から西へ向かう枝道へと入る。衛星写真を見ると、この枝道の沿線エリアには洞窟寺院ではないかと疑われる候補がいくつかあって気になっていたのだ。
これからその候補地のひとつへと向かう。
道は未舗装に変わる。こんな道は自分の前に車でも走ろうものなら砂煙で数分は走れなくなる。
途中の村でさらに枝道に入る。
しばらく見通しの悪い潅木の林の中を悪路を進むと、やがて小山が見えてきた。
寺の門もある!
洞窟寺院かどうかはまだわからないが、尾根にパゴダや大仏が立ち並ぶかなりの観光寺院のようだ。
寺院に到着して境内を見回すと、山腹に門のようなものが見えるではないか。
あんな場所に意味もなく門を造るはずがない。あそこにはまちがいなく鍾乳洞がある!
標高差は50mもなさそう。登るのはたいしたことはないだろう。
おいしいデザートはあとに取っておいて、まず寺の伽藍をチェックしていこう。
これはたぶん僧房。修行僧が寝起きする建物だ。
こちらは瞑想堂か? 日本の寺院でいう、座禅堂のような場所。
あるいは
こちらは過去二十八仏堂。
駐車場を兼ねているという大胆な造り? 違うよね?
ではいよいよ、お楽しみの洞窟部分へと登ろう。
標高差は大したことはなく階段もあることから、手前のタタキのところでサンダルを脱いでいってもよさそうだが、場合によってはその先に岩場の山頂ルートがあるかもしれないのでサンダル履きのまま登ることにした。
階段の途中途中には仏像が配置されている。
これは金のカエル。
カエルはカレン州では聖なる生き物とされ、お寺の前には狛犬的に配置されることが多い。
8分ほどで洞口に到着。
門の先には巨大な白象が置かれていいる。
その象の横には案の定、洞窟が口をあけていた。
いくつか見える小山にも鍾乳洞があるのかもしれないがほとんどは近づく道もない。
汗も引いたところで、いよいよお楽しみの鍾乳洞へと入洞する。
洞口からはすぐに階段で下へ降りていく。
突き当たりの踊り場から、またさらに下へいく階段がある。
堂内にはたくさんの仏陀が並んでいる。過去二十八仏が何セットか祀られているようだ。
洞は折れ曲がって伸び、天井に無数の仏龕がはめ込まれている。
照明はないが、うまい具合に堂内に自然光が届いていて、懐中電灯は不要。
折れ曲がった先は出口になっていた。
貫通型の鍾乳洞なのだ。
鍾乳洞の全長は70mほどか。
鍾乳洞を通り抜けると大仏があり、出口はその大仏の背中にあたる。
その大仏の前には得度堂があった。
このお堂へは別の登山ルートからも登れそうだったが、山を巻くことになるので鍾乳洞を通過するのがメインルートであろう。
再度洞窟を抜けて見晴らし台まで戻ると、さらに山のほうへ登るルートがあったので行ってみた。
そこにはアーナンダ寺院ふうのパゴダがあった。
その先は岩場になっていて登ってもなにもなさそうだ。
見晴らし台からはもう一つのルートがある。
このルートは岩場で、ぱっと見にはわかりにくいのだが、木の根にしがみつきながら登れそうな踏み跡がある。
その先にはパゴダがあるので行ってみることにした。こういう場所を予期してサンダルを履いてきたのだ。
岩場の上にあったのは四角い基壇に載ったパゴダ。
基壇は遠方からパゴダを見えやすくするために持ち上げる目的で造られているのだろう。
パゴダの周囲にはジャスミンが植えられていて、うっとりするような香りが空気を満たしていた。
このパゴダから先は尾根に踏み分け道がある。
最初にこの寺に来たときに見えていた尾根だ。ここからはさして険しい場所もなく尾根を下っていける。
大仏に到着。
高さは5mほど。最初に見たときは大きく感じたが、意外にいこじんまりしている。
手前に一頭だけいるシカは何者なのだろう。
大仏の足下にはミニチュアのゴールデンロックがある。
ここまででだいぶ下ってきたな。
四角基壇のパゴダがもうあんな遠くになった。
ん? 小さな洞窟っぽいものがある!
なんとこの洞窟も尾根を貫通していた。
洞窟の全長は8mくらいか。それほど細い尾根を貫通しているのだ。
洞窟を抜けたところにはわずかな平地があり、謎の男女の像があった。
女は棒を振り上げ、男はナタを持って駆けつけているようだ。大事な子ブタが大蛇に食べられそうになったのを棒で応戦し、夫がナタを持って助けに来たという場面のように思われる。
おそらく仏教説話に関係するものなのだろうが、ちょっと物語が想像できない。
さらに尾根を下っていくと、像が増えてくる。
頭のとんがった行者を拝む信者。だが信者の視線は行者ではなく横のほうを向いている。そこには菩提樹の下で瞑想する仏陀がいるのだった。
これも何かの説話か。
仏陀の背後には踊る女たち。あるいは天部の神か。意味はわからないのだが、そういう意味のわからなさがミャンマーの寺の楽しいところだ。
この寺は洞窟寺院なのだが、鍾乳洞はあまり長くなく、どちらかというとこの尾根歩きのほうが楽しかった。
(2016年12月25日訪問)