すでに鍾乳洞も発見できたし、きょうの目的はクリアした。念のためGoogleMapsで見逃しがないか確認すると、北のほうに見える三角形の山のふもとにお寺があるのに気付いた。
距離は5kmほど。行って帰って10kmになるが、せっかくだからもう一箇所だけ行っておくか。
寺の参道に到着。
参道は500mほどの直線の枝道で、道の両側に点々とパゴダがある。
太陽は完全に山の陰に入ってしまい、あたりは急激に夕方の気配になってきた。
山門は地味な僧院の感じ。
パゴダがあるな。
あのパゴダにお参りして撤収するか・・・
と、思いきや、パゴダの背後に鍾乳洞が!!
しかもミャンマー人のSNSで見たことがある風景だ。場所がわからなかったが、ここだったのか!
さっきの鍾乳洞を見たあと、呑気に山登りなどしている場合じゃなかったのだ。
完全に暗くなるまでもうあまり時間がない。
僧院部分の確認はせず、鍾乳洞に直行しよう。
登り口では山門の工事中で、きょうの建設工事を終えたお坊さんがくつろいでいるところだった。
鍾乳洞なので普段ならばサンダルを履いていくか、持って上がるところだが、ここからお坊さんが同行してくれるようなので、タタキのところで脱いで上がった。
石段も工事中のためか小石やコンクリ片が転がっており、歩くと足の裏が痛い。
だが登りは大したことなく、すぐに洞口に到着。
同口は斜めの割れ目のような形をしているが、中はホールになっていた。
フローストーンを利用して、複雑に仏像が配置されている。これまでに見た洞窟寺院のなかでも特筆すべきすばらしいレイアウト。
すごく上のほうに小さな仏像が置かれている。
遠近感を強調するため奥のほうに小さな仏像を配置するというのは洞窟寺院でよくある手法。こういうところは上手いんだよなあ。
洞内には照明はなく、自然光のみ。
ローソクの明かりが美しい。
二十八仏があるあたりは天井が低くなっている。
入口から50mほどで仏像がなくなり、自然の鍾乳洞になっていた。ゴミが散らかっているので、ここから先へ入る人もいるみたいだ。
同行したお坊さんも「さぁこの先も行きなさい、面白いから!」とか言いながら、洞窟の奥を指さしている。もう暗くなる時間の訪問者に迷惑な顔もせずこういうノリのミャンマーのお坊さん、本当にスキ♥
これは洞窟の奥から洞口を方向を見たところ。
少し進みかけたが、裸足なのでキビキビ歩けない。
かといって山門のところまで戻ってサンダルを取ってくる時間はもうない。
う~ん、残念だがここまでか。ここはもっと奥まで入ってみたい鍾乳洞だった。
石段の途中に平地があり、工事現場のようになっている。
この工事現場の奥にも鍾乳洞らしきものがあり、石段を上るときにお坊さんに「アレ、洞窟でしょ?」と訊いたのだが、「階段の上にもっとイイものがあるから、そっちは行かなくていいよ」みたいに言われて、確かめられなかったのだ。
帰路に一応、確かめてみることにした。
中には小さな仏像がひとつ置かれているだけ。
これから作り込んでいくのだろう。
奥は少なくとも50mくらいは続いていそう。しかし、とても裸足で入っていける洞窟ではなかった。
いずれにしてももう日が落ちるので戻らなければ。この寺は機会があればいつかまた鍾乳洞だけを見に来たい。
そのころまでにはこの第2洞窟も整備が進むかもしれない。
パプン街道を戻るうちに完全に日が暮れ、星が瞬き始めた。もうボタピュー村から渡船を使って戻れるとは思えない。
渡船を使わず、サルウィン川西岸を通ってパアン市まで戻ると、20km以上余計に走らなければならないのだ。
ダメ元で例の岸辺まで行ってみると、暗闇の中、荷物を積むために舟待ちしている男たちがいた。オートバイを渡したいと伝えると、対岸に向かって大声で叫び始めた。川幅は500m以上あるのに!
だがこの国の夜には騒音を立てるものもなく、どこまでも静かだ。同時に懐中電灯を使って合図を送ったら、しばらくして渡し舟が来てくれた。
偶然現地の人がいたので運が良かった。おかげで、星明かりで真っ暗なサルウィン川を渡るという得難い体験もできたのだった。
シュエゴン町まで来ればひと安心。道端の商店でペットボトル入りのガソリンを補給して帰路の燃料も万全。
ふと見上げると驚くほどたくさんの星と天の川が見えていた。その満天の星の下を、滞在しているパアン市まではまだ1時間半の道のりがあるのだった。
(2016年12月30日訪問)