藍住町で公園を探していて迷い込んだ小さな団地。老朽化した低層の団地で、プレハブを増築した家や立ち退いた家などが多い古い団地だ。
その団地の一角に、遊具っぽくない滑り台を見つけた。
ブランコ、滑り台、鉄棒が設置されているが、時代を経ている団地なので、もうこの遊具で遊ぶような小さい子供はいないのだろう。ひと気がなかった。
滑り台はエメラルドグリーンに塗装された鉄製で、滑降部は黄色のFRP樹脂板。黄色い樹脂は成型色である。
滑り台の他の部分をみるとわかるが、この滑り台は規格品や専門遊具メーカーの品ではなく、日ごろベランダなどを作っている鉄工所の仕事なのだろう。
デッキの手すりには鉄筋を折り曲げて溶接してある。だが、この鉄筋の曲げ方や取り付け方もぞんざいだ。
安アパートの屋根の上に物干し台でも取り付けたような仕事ぶりである。
このようにデッキ部の手すりが上方に向けて開放されている(アーチ、貫、笠木などがない)構造を持つものを「開放デッキ」型滑り台と呼ぼうと思う。
滑降部の樹脂板は左写真のように鋲で止められているが、その間隔はまちまちで左右の位置もずれている。いかにもやっつけ仕事だ。
一見するとどうということがない滑降部だが、これはFRP樹脂製なのだ。
裏側から見てみるそのようすがよくわかる。
FRP樹脂は強度は強いが、摩擦に弱く、滑り台観察者たちのあいだでは滑降面には向かないと考えられている。ところが徳島県にはこうしたFRP樹脂の滑降面を持つ滑り台がそれなりの数分布していることがその後わかるのだが、これはその最初の物件となったものだ。
滑降面を良く観察すると、表面が削れて、内部の繊維が見えている場所がある。
滑降部の下部は滑降面が直角に折れ曲がっている。
破損している箇所から内部の繊維が見えていた。
この滑り台はもう撤去されてしまっているようだ。
(2003年08月30日訪問)