池田町にタコの山がるという噂を聞いて、2003年の秋に公園の調査をしたが結局見つからなかった。
ところがその後、タコがあるという公園の具体的な名前のタレコミがあり、再び池田町へと来ている。
場所は
その坪尻駅のある谷には鮎苦谷川という谷川があって、公園の前に小さな淵を作っている。
その崖に地層の褶曲が見られる。
吉野川北岸を構成する泉層群と呼ばれる地質帯の露頭であろうと思う。
箸蔵公園はどちらかといえば野球やテニスの運動場で、児童公園ではない。だがその一角にぽつんと遊具があった。
それはタコの山ではなく、イカの滑り台だった。
「イカの滑り台」は当サイトでは初出となるので、詳しく紹介していこうと思う。
製作はタコの山と同じ前田環境美術で間違いないと思う。だが同社のカタログではイカの滑り台は確認出来ない。したがってこの滑り台の本当の商品名は不明だ。
だが、多くの地域でこの滑り台が「イカ」と認識されていることから、滑り台観察者のあいだでは当たり前のように「イカの滑り台」と呼ばれている。
この滑り台が「イカ」と認知されるのは、上部の三角形のテント部分と触手の組み合わせによると思われる。
このテント部分の頂点はかならず背びれのように片方になびいたデザインになっている。この背びれがなびいた方向をこの生物の後方と見なすと、真正面と真後ろに触手が1本ずつ、左の体側に滑降部が2つ、右の体側に滑降部が1つとなっている。これはすべてのイカの滑り台に共通であり、左右鏡像(ヒレのなびく向きが逆)というような物件は見つかっていない。
イカの滑り台の特徴のひとつに、垂直の穴というディテールがあるのだが、この物件にはその穴がない。
通常であれば左写真中央の三日月型の窪みの部分にあるはずなのだ。この物件では埋められた様子もなく、もともと開口していなかったようだ。そういう意味ではこの物件はイカの滑り台の重要な要素が欠けていることになる。
もうひとつの注目点としては、後ろの触手の下部である。この部分に穴壁があるタイプと、壁がないタイプがある。イカだからむしろ「膜」と呼ぶべきかもしれないが。
そして壁があるときは穴の数に違いがある。おそらく滑り台の規模が大きいほどこの穴の数が増えるのではないかと思う。この物件は穴が5つあり、知られている限りでは最大。
全体的な造形のレベルは高く、ラインも美しいと思う。
この公園にはこれしか遊具がないので子どもたちが群がって遊んでいた。滑り台にとっては幸せな状況だろう。
下部をのぞくと柱が3本あった。
イカの躯体は柱以外に、2本の触手と3本の滑降部が接地しているので、この3本の柱を合わせると合計8箇所で支えていることになる。
他の公園のすべてを調べたわけではないが、この下部に柱が3本あるのも、イカの滑り台の柱数としては最大ではないかと思う。そして、垂直の穴がない原因がこの3本柱構造によるのではないかという気がする。
テントの中から後方の触手を見たところ。
タコの山の内部からの風景とよく似ている。
後方の触手から前方方向を見たところ。
この物件は私の知る限り、徳島県では唯一のイカの滑り台である。そして県西を代表する人研ぎ滑り台と言っていいのではないか。
(2004年07月10日訪問)