宮倉のへの字台

柱がなく「への字」型に架構された人研ぎ台。

(徳島県阿南市羽ノ浦町宮倉原ノ内)

羽ノ浦町は徳島県東部に位置する町だ。だが「羽ノ浦町には何がある?」と聞かれて答えられる徳島県民は少ないのではないか。私にとっても「小松島市と阿南市の間にある細長い町」「阿南市に行くとき通り抜けるところで渋滞しやすい」くらいの認識しかなかった。だが認識が薄いということは単に自分が目をあけていないから、本来見えるべきものが見えていないという可能性もある。そこでまだ木枯らしも肌寒い3月の初旬、羽ノ浦とその隣の那賀川町を訪ねてみた。そしてそれ以後何度か足を運んで、羽ノ浦・那賀川両町の隅々までを見て回った。

羽ノ浦・那賀川両町は那賀川河口部北岸の町で、かつては那賀川上流からの木材の集積加工地として繁栄したであろうこと、そして林業の衰退とともにその役目を終え、ベッドタウン化つつあるということが、町を回ってみると見えてくる。那賀川中流部までは今も車がすれ違えないような道が続くから、かつて木材輸送はほぼ(いかだ)流しだったろう。だが那賀川上流部は今やダムだらけ‥‥筏流しもなくなり木材はトラック輸送になり、そのあおりで羽ノ浦、那賀川両町のにぎわいも過去のものとなったのであろうと。これは別に図書館で調べたわけでなく、町を歩いて感じたことだ。

そんなあまりぱっとしない羽ノ浦町ではあったが、他の町にない、ひときわ光るものがあった。それが滑り台である。

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羽ノ浦を訪れた目的は公園巡りではなく、羽ノ浦という町そのものを観察することにあった。だからまず、旧市街を通ろうと思ったのだが、渋滞に巻き込まれてしまい、農道を迂回しているうちにこの公園の横に出てしまった。

公園は宮倉(みやぐら)農村公園。コミュニティセンターに併設された小さいながらもひと気の多いにぎやかな公園だった。

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滑り台の形式は、滑り台保存館の索引によれば「∧型」。ここでは呼びにくいので「への字型」としておく。

構造、意匠とも#133と共通点が多い。への字型の構造だけでなく、垂直リングや空中回廊と接続しているところなど、どう考えても同一のメーカーの商品と考えられる。

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面白いのは下部。

単に屋根になっているだけでなく、そのなかに小さな土管が取り付けてある。

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登坂部は、ホールド、鉄製階段、タイヤの3種類。

まったく違う味付けが楽しい。

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山の頂上部分には平らな場所はなく、丸く作られている。山頂での居心地は悪いが、面白い造形だ。

中央の階段を登りきったところからはステンレス製の滑降部につながっている。だが、なんとなくあとから滑降部を取り付けたのではないかという印象を受ける。

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滑降麺は人研ぎでスピードも出ることから、人研ぎ面だけで充分に滑りが楽しめると思うのだ。

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滑降面は人研ぎ。

赤茶色の石が使われていて、それがこの滑り台全体の色になっている。つまりこの台が全体的に黄色っぽいのは天然の色によるところが大きいのだ。

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滑り台にはリングラダーが連結していた。

(2004年03月07日訪問)