岩屋寺

不思議な形の笠塔婆がある。

(山口県周南市下上)

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「・・・なんでここに来たんだ?」

ドライブマップには見る場所の候補にマルが付けてあるのだが、どういう理由でマルを付けたのか思い出せず、途方にくれている自分がいる。

岩屋寺は徳山市の郊外、里山の小さな谷筋のどん詰まりの小さな寺だ。たぶん「岩屋」という名前で、洞窟でもあるかと期待してマーキングしたのだろう。

でも、どうやら岩屋はありそうにない。

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このころはまだインターネットで気軽に地方の小寺院の詳細を検索できる時代ではなかったので、すべてが行って見てのお楽しみという良い時代だった。

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本堂は入母屋の妻入り。

本尊は木造聖観音菩薩で、鎌倉時代の作で市指定文化財に指定されているという。

本堂の横に客殿風の建物が接続している。

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その客殿と思われる建物には「タイ古式整体」という看板が出ている。寺がマッサージをやっているのだろうか。

建物は寺の建物という感じではなく、地域の集会所のような風情。

客殿の左には東司があった。念のため裏のほうへ回ってみたが、やはり岩屋は見当たらない。

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境内にあった笠塔婆。

四角柱の上に笠が載っている灯籠のような形の塔婆だ。竿の部分の4面には梵字や法華経などが彫られている。

近くの墓地で発見されたのを移設したもので、市指定文化財に指定されている。

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寺の境内から参道方向を見たところ。

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この参道の田んぼに、護符がはためいていた。

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町内にある上野八幡宮の護符で、五穀成就・悪中退散といったことが書かれている。

さて、このときから15年がすぎ、インターネットでは何でも調べられるかのような時代が訪れた。

あらためてこの岩屋寺を検索してみたが、あいからわず詳細な情報はほとんど見当たらない。考えてみれば、自宅から400kmも離れた他県で名も無き小さな寺に立寄るというのは得難い体験でもあり、これもまた旅の一興なのであろう。

(2003年09月04日訪問)

土葬の村 (講談社現代新書 2606)

新書 – 2021/2/17
高橋 繁行 (著)
筆者は「土葬・野辺送り」の聞き取り調査を30年にわたって続け、平成、令和になっても、ある地域に集中して残っていることを突き止めた。
それは大和朝廷のあった奈良盆地の東側、茶畑が美しい山間にある。

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