秋吉台にはかなり広い範囲に遊歩道が造られている。矢ノ穴ドリーネに車を置きしばらく遊歩道を歩いてみた。
地図を見てみると「矢ノ穴」のすぐ北側には「鬼の穴」、北西には「ながじゃくり」という大規模なドリーネがある。それらのドリーネに降りたら、この春に日咩坂鍾乳穴のドリーネの底に降りたときのあの感覚をもう一度味わえるのではないか、そう思ったのである。平日ということもあって、人は誰も歩いていない。道からちょっとそれて、ドリーネに入るにはおあつらえ向きの状況といえよう。
だけど、実際に遊歩道を歩いてみると、地図で想像していたのと違うのだ。阿哲台のドリーネは中に村や畑地があって生活の場になっていたり、あるいは、薄暗い山林でその底にある吸い込み穴は死の世界へのとばくちのようなまがまがしい場所だった。それに対してここは若い草原で、公園かゴルフ場のような人工的な風景。「さぁこれがカルストですよ~、すごいでしょ~、よ~く見てくださいね~」という声が聞こえてきそう。
もともとは農地や牧草地として焼畑を行なってきたという本来の営みがあったのだろう。だがいまはそれは機能しておらず、観光資源として、あるいは、文化財的なものとしてこの景観が維持されているのだ。
下写真は鬼の穴ドリーネの方向で、遠くに廃業した秋吉台グランドホテルが見えている。
これは、ながじゃくりドリーネかな。
道はないから簡単には降りられそうもないが、無理に降りてみても、ここから見える通りのものなのだろう。あの阿哲台をめぐったときのビックリ感がぜんぜんない。
なんだか、ちょっと白けてしまった自分がいる。
途中にある景観スポット「長者が森」。
その昔、長者の屋敷があった場所だとされ、山焼きをせずに自然林がスポット的に残されている場所だ。実際はこの台地上には川がなく、水を得るのが困難なので、ここに屋敷があったというのは史実ではなく伝説のたぐいだろう。
牧草地を収穫した跡か。
本来はこうした用途や畑地などにするために山焼きをして、草原を維持してきたのだろう。
だがこの収穫だって、効率のよい牧草目当ての営利的な耕作なのか、伝統や技術の保存のために補助金などを使って続けているものなのかわからない。
真名ヶ岳付近の展望所。
このように道路から遮るものがなく、草原を見渡せるので気持ちの良いドライブウェイだ。
この道路の右側は長い谷のような地形になっている。「
真名ヶ岳付近では草原から無数の石灰岩の柱が突き出している。この地形を「カッレンフェルト」という。すごい眺めだ。
カルスト地形を代表する景観と思うが、この風景はあくまでも山焼きをした若い森林植生であり、地質的に生まれたものではないということを忘れてはいけない。そうでないと「カルスト地形=草原」みたいな間違った刷り込みをしてしまいそうになるからだ。
(2003年09月05日訪問)