春に岡山県の阿哲台というカルスト台地を訪れたとき、初めてドリーネ地形というものを見て、虜になった。ドリーネとはカルスト台地に生じる大きな窪みである。その底に立てば360度の全周が斜面なのだ。降った雨はすべてドリーネの底に集まって地下に吸い込まれて行く。そんな地形があり、しかもその中に人が住んでいることがあるのだ。ドリーネという言葉はもちろん教科書などでは知識としては知っていたが、実見したドリーネは想像していたのとまったく違っていて、「なんなんだ、これは、なんでオレはこれを知らずにいままで生きてきたんだ」というくらいの衝撃を受けたのである。
それ以来、そのときのことを思い出しては、ドリーネ愛を募らせていた。あらゆる自然地形、地質的な事象の中でドリーネが一番好きだと言ってもいい、そのくらい好きになってしまったのだった。端的に言えば、石灰洞窟(鍾乳洞)よりもドリーネの方が好きなのである。
秋吉台といえばドリーネの宝庫である。そのひとつ「矢ノ穴」へと行ってみることにした。なんのことはない、秋芳洞の裏口「黒谷口」はこのドリーネの底に開口しているのだ。
秋芳洞のメインゲートは台地の崖線の下にあり、地下水が吐出する場所であり、矢ノ穴は台地の上側にあり地下水を吸い込む場所なのだ。
ドリーネの底の広さは200m×300mくらいで、深さは50mくらいであろうか。立派なドリーネだ。
ドリーネの底に秋芳洞黒谷口の駐車場があるので、車でドリーネの最深部まで気楽に入ることができるのがうれしい。
秋芳洞メインゲートと違って、土産物屋も少なく、駐車料金も取られない。
このドリーネの斜面にはホテルがあり、そのホテルから黒谷口を結ぶ観光リフトがある。この時点ですでに稼働している様子はないので、ホテルもたぶん営業していないだろう。
(2003年09月05日訪問)