雨は相変わらず降り続いている。山口県をだいぶ南下してきた。下関市の北部にある菊川町、法輪寺には室町期のお堂があるというので立寄ることにした。
町外れの静かな里山の中に寺はある。
境内は瀟洒な白壁に囲まれているが、庫裏にはひと気が感じられず、墓地もないので無住かも知れない。
寺は平安時代の創建という寺伝をもち、本尊も平安仏だが、確実なのは本堂にある応永20年(1413年)の棟書きである。
本堂は寄棟造りで木割りも太く、確かに、見るからに室町ふう。
県指定文化財だけれど、国重文一歩手前という物件だ。
でも、、、何といったらいいのか、外部から見えるほとんどの材木が昭和の修復のときに入れ替わっており、「建築史の研究も進んだ昭和の宮大工が室町ふうの建物を注文されて、忠実に新築しました」と言われたら、そうかなとも思ってしまいそうな新しさ。
外周の主柱はかろうじて時代を感じるが、それさえ室町のままかどうか確信が持てない。風雪に晒されていない内陣などは当時のままなのだろうけど。
三間四方で、正面中央1間が地蔵格子、脇1間は蔀戸。
柱が角柱なのが特徴的で、意匠は和様。墨書によると熊野若王寺権現の社殿だったそうで、斗栱などがないのはそのせいだろう。
現在は本瓦葺きで、昭和33年の改修後、さらに昭和55年に葺き替えている。改築前は茅葺きで軒裏が野垂木だったというから、このような重厚な雰囲気ではなく、もっと質素な感じだったろうと思う。あまり頑張って改修してしまうと、違う風景が生まれてしまう気がする。
室町時代にはまだ燻し瓦はなかったはずで、しかも瓦の利用自体が少なかった時代なので、創建当初は檜皮葺きかこけら葺きだったのが、落ちぶれて茅葺として残ったのかも知れない。
本堂の右側には庫裏。
右奥には鎮守社があった。
(2004年05月03日訪問)