津和野で教えられた場所、桜江町大字川越へやってきた。
低い山脈がどこまでも続く中国地方らしい風景。江の川という河川のわずかな平地にJR三江線、国道261号と旧道が通っている。昔ながらの集落は旧道沿いにあるので旧道をゆっくりと走りながら桑畑を探した。JR石見川越駅から少しすぎたあたりで、線路沿いに桑畑があるのを見つけた。
面積は2反5畝ほど。毎年刈り込んではあるが、枯れた株も多く、桑はまばらだ。
聞いたところでは、現在島根県に養蚕農家はないが、この村で88歳になるというおばあちゃんが一人でカイコを飼っているという。おそらく元養蚕農家でカイコが好きなのか、あるいは染織か繭クラフトなどの趣味で少しのカイコを飼っているのだろう。
だいぶくたびれた桑園だが、それでも5,000頭くらいのカイコを飼育できそう。
ただ、桑の状況を見る限り、切られている枝が見当たらず、この秋の養蚕はしていないようだ。
はっきりとはしないが、たぶん6~7月ごろに切り戻した株から2~3ヶ月分くらい枝が伸びた状態と思う。春にカイコを飼ったか、あるいは、カイコを飼わなかったとしても桑園の管理上切り戻したのは間違いない。
品種はおそらく「
現在、多くの桑園で見られる「一ノ瀬」よりも葉と葉の間隔が短いのが特徴。
桑の仕立ては低く切り戻した根刈り。
畑の一角に大きな桑があり日陰を作っている。小屋の跡があった。畑に小屋が必要な理由がよくわからない。もしかして土中育の雨よけなどの機材の格納庫か、などと想像をたくましくしてしまう。
だが畑には土中育をしたような溝の跡は見当たらなかった。
集落を少し歩いてみたが村人に出会わず、蚕具が置かれた家も発見できなかった。
カイコを飼っている家があるとすれば、ここから見える家々のどこかなのだろう。でもどうやらこの土地では目的の土中育の遺構は見つかりそうにない。
旧道に沿った古民家。
屋根に煙出し櫓を載せている。もしかすると、こうした建物が島根県の養蚕家屋なのではなかろうか。
どうも想像以上に、島根の養蚕農家を見つけるのはむずかしそうだ。
JR三江線は2018年に廃線になった。
(2010年09月19日訪問)