さて、網漁の記事のなかで、遠くに見える小山にいずれ行ってみたいものだ、と書いている。
残りの時間を考えても行けそうな距離感なのである。
目的の山を目指しパプン街道を北上する。この街道を150kmほど行った先にあるパプンは(おそらく)カレン民族同盟の中枢がある場所だ。つまりカレン州の中でも特にデリケートな地域へ向かう街道であり、何人もから「この街道はヤバイよ」という話を聞いている。
でも50km先のカママウン村までは立ち入りOKということも聞いたので、いまいるあたりは大丈夫だろう。それに、なにせ以前に別ルートでカママウン付近のウェピャン洞窟まで行ってしまったので、いまさらなのである。
とはいえ、初めて自分の運転で走る道でもあり、通常以上の緊張感はある。
周囲の何もない潅木の森も、どこか不安をかき立てる風景だ。
しばらく走るとひなびた村に入った。
道の先に岩山が見える。
だがこの岩山は目的の山ではなかった。
採石場はあるが、パゴダはなく、お寺もないようだった。
その先に目的の山が見えてきた。
山への入口にはお寺の総門があった。
枝道を入る。
しばらくは村の中を抜けていく。
村の森が切れると、目的の山への一本道に出た。
おおおぉーっ! 思ったより雄大な小山だ。
鍾乳洞のひとつもあってもおかしくない。これは期待が高まる。
寺の敷地の入口には独立した小さなパゴダがあった。
これは何なのだろう? 宝物展示館?
中に展示されている宝物はこんな・・・。
寺までのアプローチは雄大だったわりに、境内に入るとどこに参詣したらいいのかよくわからない、とりとめもない伽藍配置だ。
しかたないので、とにかく山のほうへ行ってみよう。洞窟があるとしたら山へ向かう道にあるだろうから。
途中から道がなくなり森の中に入った。
その森で面白いものを拾った。ソリザヤノキの種だ。
ミャンマー語ではチャウンシャアリ(猫の舌の果実)というらしい。グライダーのように滑空する。薄膜の部分はまるで昆虫の翅のようで、昆虫と植物が同じ形態に収斂した進化の様子はとても興味深い。
日本でもカエデの種が竹とんぼみたいに滑空する。山で谷から吹き上げる風に乗って、尾根を越えて隣りの谷に飛んでいくのを見たことがある。
山すそまでいってみたが、洞窟らしいものは見当たらない。
う~ん、あると思ったんだがなぁ・・・
小さなパゴダがあった。
そのパゴダから山に登る狭い道がある。
一応登ってみようか。
けっこう険しい道で、葉が積もっていて滑るので、両手で岩にしがみつきながらの登りだ。
少しのぼるとまたパゴダがあり、少しだけ景観を眺められる。
汗だくになってきたので、ほんのわずかここで休憩。
そこから先はさらに険しくなり、ハシゴが多くなる。
こんな壊れかけたハシゴもある。ほとんどハシゴが役に立たないので、岩場にしがみついてクリアした。
だがどこまで上っても険しい斜面ばかり。しかも竹の葉が厚く積もっていて滑るのだ。
たぶんこの先へ進めば山頂に立てるのだろう。だが今回は登山が目的でもないし、戻る時間を考えるともう帰路につかなくてはならない。
残念ながら、この寺は時間切れだ。
いつかこの山を登るときが来るだろうか。来ないだろうなぁ・・・
山を下りてきたところに、得度堂と食堂があった。
講堂らしきものもある。
講堂と僧房は回廊でつながっていた。
いまにして思うとこの山は、登ったりせずに山すそを左回りに巻くべきだったかもしれない。
もしもう一度このエリアに来ることがあったら、確認しよう。
(2019年03月07日訪問)