2020年2月。世間では新型コロナウイルスCOVID-19が問題になり始めていたなか、プロジェクトまとめのための最後の渡航となった。移動日を除けば現地滞在は3日間。当然業務スケジュールはびっしりである。
でもこれが最後のチャンスとなる可能性が高いので、ザバー洞窟の探索をなんとか進展させたい。
夜明け前から朝食までの時間を利用して、最後の探索へと出かけることにした。
新たな情報もなく、とりあえず南ヤテピャン山脈の西麓を目指す。
コーゴン洞窟山を過ぎたあたりで、朝日が登ってきた。
コーゴン洞窟にも崩落した大きな崖が見えるが、探している露頭とは違う。
きょうはまず南ヤテピャン山脈の西側へ回り込むことを優先しなければ。
南ヤテピャン山脈の南端に山岳パゴタっぽいものが見えた。念のため確認したかったのだが、時間が早すぎたため門がまだ開いていない。
南ヤテピャン山脈の西斜面が見えるところまで行って、例によって村人にザバー洞窟の写真を見せて尋ねるが知らないと言われる。こんな近くで訊いてもわからないとなると、この近辺にある見込みはないのか。
バリケードのようなものがあった。
たぶん「通行止め」みたいなことが書かれている。
街道の工事のために迂回路へ入らせるためのバリケードのようだ。きょうは工事はしていなかったのでここまで来られたのだろう。
これが迂回路になる。コーゴン洞窟の山を巻くことができる間道らしい。
きょうはこの道に賭けてみるか。
こういう灰褐色の道は沖積平野の堆積物で、雨季になったら大変なことになる。乾季だから通れる道なのだ。
途中は迷路みたいに入り組んでいるが、所々に道標があってなんとか進むことができる。
うぇぇ、ここはひび割れた沼の底だ。
四輪車のワダチで踏み固められているとはいえ、オートバイで走るにはかなりの運転テクニックが必要。
奥に見えているのがコーゴン洞窟の裏側になる。
コーゴン洞窟の山をほぼひと回りしようとしたところに小さなお寺があった。
どうやら洞窟寺院のようだ。
朝早いというのに、お坊さんが歓待してくれた。
本尊はコブラ光背の、当サイトのいうところのムチャリンダ仏。
その右手が洞窟への入口になっている。
洞窟入口にはシンティワリ立像と、触地仏。
ミャンマーの寺院では定番の仏たち。
お寺で懐中電灯を持ってきてくれた。
「大丈夫です。懐中電灯は持参してるんで!」
「じゃあ、勝手に見てくれ。洞窟は途中で上下に分かれている。下の穴へ行ったあと、戻って、上の穴に入るように」
「りょーかい!」
ここが二股になっているところだな。
上のほうへ登るルートは、手すりがあるけれど足場が悪くてちょっと厄介そう。
言われた通りにまず下の穴を進もう。
こちらも決して足場がいいとは言えないが、それなりに整地されていて歩きやすい。
ガマガエルがいた。
カレン州では聖なる生き物とされている。
紫色に見える砂はすべてグアノ。この洞窟の床はほとんどがグアノで出来ている。
下の洞窟は、少し下ったあとで小さなホールに出て、先は行き止まりになっていた。
戻って、上のルートへ。
手すりにしがみついて、リムストーンとフローストーンを登る。
洞内で裸足になれって言われなくて助かったよ。
とはいえ、サンダルでの洞窟探検なので、決して楽ではない。
ちょっと狭いところもあるけれど、階段が造ってあるのでかがみながら登って行く。
狭洞を抜けた。
狭洞の終点にはフローストーンに飾られた仏像。
周囲には二次生成物が、まるで仏に供えられた鉢のように並んでいた。
この仏を過ぎると、内部はかなり大きなホールになっていた。
鍾乳石も多く、鍾乳洞としてはかなり立派な部類。
でも、内部にはグアノが積もっていて、その発酵熱でサウナのようになっている。
カメラのレンズが曇っているのではなく、銭湯みたいに湯気で煙っているのだ。
ホールの中は多少歩き回れるのだが、グアノで滑るから斜面は登れない。
いや~、面白い洞窟だ。コーゴン洞窟のすぐ近くにこんな洞窟があったなんて!
でも、コーゴン洞窟を訪れる外国人観光客は、絶対こっちには来ないんだろうな。
洞窟を見せてもらえたし、懐中電灯まで用意してくれたのでいくばくかの喜捨をした。
ダメ元でお坊さんにザバー洞窟の写真を見せたところ、なんと名前を知っていて、場所もわかるという!
お坊さんから詳細に道を聞き出した。
でもどうやら今日はもう時間切れだ。明日の朝、もう一度出直すことにしよう。
(2020年02月12日訪問)