2年間続いたプロジェクトの最後の仕事の日。
明日には帰国のためヤンゴンに向けて発つので、泣いても笑ってもカレン州で過ごせるのは実質的にきょうまでだ。もしきょうザバー洞窟が見つからなければ、もう私がその洞窟に行くことはないかもしれない。
少しでも時間を作ろうと、昨日よりもさらに早い時間に宿を出た。
夜明け前でまだ周囲は薄暗く、気温は20℃を切っており半袖では寒いほどだ。
郊外まで来ると、聖地ズェガビン山が朝焼けに染まっていた。
オートバイのガソリンがちょっと心許ないので、ガソリンスタンドに入って給油。
給油のような些細なことが、いつかは遠い国で起きたぼんやりとした記憶になってしまうのかと思うと、いま五感から得られるすべてがかけがえのないものに感じられる。
サルウィン・パアン橋を渡って、サルウィン川の西岸へ。
きょうの目的地、南ヤテピャン山脈が霞んで見えてくる。
サルウィン川の西詰め、料金所を過ぎたらすぐに左に入る道がある。
すぐ右折して
このあたりの観光ルートで、多くの観光客が通る道だ。
2 km ほど進んだところで、今度は
そこから 1 km ほど進むと、大きなY字路がある。
観光地であるヤテピャン洞窟への道はここを左カーブしている方向へ行くのだが、昨日トェミン洞窟寺のお坊さんに聞いた限りでは、ここを右に行くらしい。
「ザバー洞窟はヤテピャン洞窟の西にある」という情報に気を取られすぎて、私はこれまで山脈の西斜面ばかりを探していたのだが、ザバー洞窟は東斜面にあるというのだ。
お坊さんにかなり具体的な場所を教えてもらったので、あとはそこへいく道を見つけるだけだ。
Y字路のところにあるガソリンスタンド、兼、水がめ屋で道を訊ねる。
お店で写真を見せて尋ねたが、
「これはヤテピャン洞窟だね、このY字路を左にずっと行けばイイヨ」
「そうじゃなくて~、ザバー洞窟の行き方なんだけど」
「そんな洞窟は知らないヨ」
こんな調子なのだ。すごく近くまで来ているはずなのにわからないのだから、遠くの村で訊いてわかるはずもなかったのだ。こうなっては自分で道を見つけ出すしかない。
その前に!
Y字路の股のところに小さな学校のようなものがあり、そこに滑り台があったので見ていくことにした。
滑り台全体に屋根がかけられていて、雨季でも濡れずに遊べるという贅沢仕様。
滑り台の型式は、左右に滑降部がある富士型というタイプ。
タラップはハシゴ状なので、日本人が裸足やサンダルで登るのにはちょっと土踏まずが痛い。
その横にはシーソーもある。
滑降面は鉄板を曲げたもの。
滑り降りる先は折れ曲がっておらず、砂場に直行しているので、あまり勢いを付けて滑ることはできない。
反対側の滑降部。
着地用の砂場が屋根の外にあるのは、設計ミスであろう。屋根のケラバをもう少し深くすればよかったのに。
滑り台の横には、ブランコと雲梯のような遊具。
これで遊べるのはかなり小さい子どもだけだろう。
この学校のような建物は、日本の草の根支援で2007年に建てられたものだった。
「草の根支援」は小規模のODAで、大使館の裁量で現地で活動する NGO に与えられる予算の名称である。
定礎を見ると、建物と関連設備とあるので、たぶん滑り台も草の根支援の予算で作られたのだろう。
(2020年02月13日訪問)