東禎瑞のうちぬき

道ばたの商店の軒先にある自噴井戸。

(愛媛県西条市禎瑞)

ある3月の土曜日。どこかで昼飯でも食べようかとふらっと車で出かけた。とりあえず徳鴨線を西へ。どの店に入ろうかと考えながら、国府町、石井町と過ぎていく。鴨島町をすぎてしまうと、なじみの店はいくらもない。いつのまにか本来の目的を失って、ぼんやりとドライブを続けることになる。そんな日でも、県西の池田町まで行けばさすがに諦観して引き返すことになるのだが、この日はなぜかそのまま国道192号線を走り続けていた。

境目峠を越えてしまうとタガが外れ、もう引き返すという選択肢はなくなる。そこはもう愛媛県なのだ。走りながら好き勝手に旧道に入ったりしながら、とにかく西を目指すことにした。

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西条市まで来たときに、ある町内を走っていたらタバコの自動販売機があるのに気付いた。

よく見るとおそらくそれは昔の商店のようだった。もう閉店してだいぶたっているのだろう。

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車を停めて自販機の写真を撮ろうとしたら、店の前に水舟があることに気付いた。しかも水が湧いている。

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これは、西条市方面によくある自噴井戸で、ご当地では「うちぬき」と呼ばれている。節を抜いた竹を地面に打ち込むだけで湧き出すこともあるのがその名の由来だ。

町の南にそびえる石鎚山系から浸透し海に流れ出る地下水が、断層でできた水を通さない壁のような地下構造に当たって溜まり、自噴する仕組みらしい。

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西条市周辺だけで3,000箇所の自噴井戸があるという。

かなりの勢いで自噴していて、すべて垂れ流しなのでなんだかもったいないような気がしてしまう。

もっともここで自噴しなくても、瀬戸内海の海底に染み出すだけなのだろうけど。

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で、本来のお目当てだったタバコ屋はこんな感じ。

シャッター付きのタバコ売り場と販売機が連結したパターンはどきどき見かけるので、専売公社がこうしたキットを製造していたのだろう。

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少し走ると中山側の堤防道路に出て、石鎚山系がよく見えた。まだ雪をいただく山並みを背景に菜の花が咲く光景は四国とは思えないダイナミックな景観。

この山に降った雨が地下水となってうちぬき井戸から湧き出すことが実感できるような気色だ。

西条っていい土地だな。

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新兵衛橋という古い橋があった。老朽化のためか自動車は通行できなくなっている。

(2007年03月17日訪問)

水車と風土

単行本 – 2001/8/6
平岡 昭利 (編集)

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