大山座跡

大山寺の親戚筋が経営していたという芝居小屋。

(徳島県上板町宮ノ北)

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かつて上板町には鉄道があった。板野と鍛冶屋原を結ぶ盲腸線で、撫養街道の新道でもある県道12号線がその跡地である。

その鍛冶屋原線の神宅(かんやけ)駅跡から北へ伸びる通りが旧神宅村の中心地だ。現在、農協の支所がある敷地には火の見櫓が建っている。ここがかつての村役場ではないかと思われる。

➡火の見櫓の場所

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この通りにある神宅郵便局の隣りの敷地は、いまは空き地だが、かつてここに大山(おおやま)座という芝居小屋があったという。

「大山」は阿讃山脈にある四国八十八番の番外1番札所の大山寺(たいさんじ)の名前を戴いたものだろう。大山寺の本来の参道はここより1本西の道だが、鉄道駅が出来てからはこの道が大山寺詣での通り道だったのではないか。

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大山座を経営していたのは塩田という人で、大山寺の住職の弟なのだという。その家は敷地の入口に残っているが、現在は空き家になっている。

塩田家が住職を輩出したのと、芝居小屋を建てたのがどちらが先かはわからないが、この村にとって大山寺は心のよりどころ的な存在なのに違いない。

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芝居小屋は、トタン屋根の木造2階建てで、回り舞台、2階桟敷もある本格的な芝居小屋だった。

後期には映画も上映していたそうだ。映画は無声映画だったという。

「土曜館」といって、土曜日に入場料が割引になり、20円で入れたという話を聞いた。

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この大山座が廃業した後、神宅小の南に新しく大山座ができたという。場所を移転したのか、そのへんがよくわからなかった。

新しい大山座は「神宅座」という名前だったという人もいる。

(2007年12月02日訪問)

建築用語図鑑 日本篇

– 2019/4/25
中山繁信 (著), 杉本龍彦 (著), 長沖 充 (著), 蕪木孝典 (著), 伊藤茉莉子 (著), & 2 その他
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