栄座跡

旅芝居や浪曲を上演した芝居小屋だった。

(徳島県板野町下庄栖養)

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栖養(すがい)八幡神社から、県道14号の旧道を西へ進む。この一帯、現在の下庄(しものしょう)という大字はかつてあった栄村(さかえそん)の中心地だったという。聞いた話では「八幡さまの西、村役場のあたりに富士劇場という映画館があった」ということだったので聞き込みを開始。

すると確かに役場の近くに映画館があったが、それとは別にこの酒屋の西側の空き地に芝居小屋があったという。

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劇場の名前は「栄座」。

観客席は平場で、客は自分で座布団を持っていって観劇した。回り舞台等のカラクリはなかったという。上演したのは旅役者の芝居や浪曲などだったという。

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話してくれた老人は、モリヒデコ(森秀子?)一座、春子大夫一座といった名前を挙げてくれた。とても上手だったという。聞いてもさっぱりわからない名前だが、演目は浪曲ではないかと思う。

「当時人気があったといえば『壺坂霊験記』だ、立ち回りだったら『大政小政』だったな。」

そうした名前が昨日のことのようにスラスラと出てくるのは、この何ということのない住宅地にかつて文化の花が開いていたことの証なのだ。

(2007年12月02日訪問)