飯能から秩父を経て、群馬を目指す。
秩父市の目抜き通りを通っていたら、映画館の跡らしきものが目に付いた。
松竹秩父国際劇場。
アールデコ風のファサードを持つ古い映画館の建物だ。
現在は上石建材という会社の倉庫として使われている。上石建材はこの映画館の左隣りの見世蔵の建物が社屋だ。
街道から見えるモルタル造のファサードは看板建築で、背後には箱棟のかなり古い大棟が見える。
あとで調べてみたところ、後ろの木造部分は明治時代に建てられた建物で、回り舞台やスッポンなどもある本格的な芝居小屋建築だったという。
内部の様子。奈落などは埋められているようだった。おそらく2階桟敷もあったろうと思われる規模だが、それらもすべて取り払われ、大空間の倉庫となっていた。
しかし外装と屋根、つまり「ガワ」の部分は完全に芝居小屋のまま。
これはかなり見ごたえがありそうなので、裏側に廻ってみることにした。
建物は崖線に建っていて、裏側は4~5mほどレベルが低くなっている。つまり、表側の1階は、裏側からは2階になる。
手前の背の高い薄い建物は倉庫で、映画館とは別で、映画館のお尻はその先の3階の寄棟屋根の部分なのだが、、、
なんと、芝居小屋の後半のほうはアパートになっている。
それもなんというか、九龍城的なごちゃごちゃとした要塞アパートなのだ。
すっごい迫力!!
もともとは芝居小屋だったということなので、小屋の後半部分には楽屋と、公演する一座の宿泊施設があったのだろうと思われる。
それが映画館に転換して楽屋が不要になったのをアパートに改装したのだろう。
このアパート、映画の上演中にうるさくなかったのかね・・・。
大棟の棟飾り。
この建物の見どころは、表のファサードじゃなくてこの裏側の楽屋跡なんじゃないだろうか。
アパートは2階部分まである。
1階が玄関と台所で、2階が寝所になっているようだ。各戸ごとに内部に階段があるのだろう。
芝居小屋が出来た当時からの構造ではないと思う。
角部屋はちょっとだけ立派。ここも増築かな。映画館のオーナーの住居だったのかもしれない。
内部がどうなってるのか、見てみたい!
南側から見たところ。
2013年ごろ後ろの芝居小屋部分は取り壊され駐車場になり、ファサード部分はオシャレなレストランに改装された。
(2007年02月10日訪問)