魚梁瀬森林鉄道の幹線のひとつ安田川線をたどってきたが、その傍らには常に安田川があった。
安田川は全長30kmほどの短い川だが、ダムや大規模な河川工事もなく、自然の姿をよくとどめている。
その源流部は多雨地帯で杉の名産地だ。森林鉄道ができる以前にはこの川を使って木材を流送していたという。
流送というと「
一般的に管流しは毎日行うものではなく、雨などで川が増水する瞬間を見計らって行う。
水量の少ない川であれば、木造の堰を連続的に築いて材木を浮かべたり、あるいは鉄砲堰といって仮設ダムから放水と同時に材木を押し流すといった山仕事が行われてきた。
安田川は3月でもそこそこの水量があるから、自然の水量で流送ができたかもしれない。瀬となる部分には間伐材などでガイドを築いて流れやすくしたりしただろう。
現代では上流部で原木をトラックに積めば、数時間で製材所まで搬送できる。しかし流送はいつ届くかは天気次第だし、途中に引っかかったり、木材が傷んだりと、不安定な運送方法だ。それでも道路網を整備できなかった時代にはその面倒な流送以外に手段がなかった。
それゆえ、産地では森林鉄道の建設が急務であり、この四国の辺鄙な山に早い段階で鉄道が作られたのだ。
安田町与床付近で見かけた取水堰。
ちなみに堰はダムとは区別されているので「ダムのない川」と言うときには留意が必要。たとえば本流にダムがないとされる四万十川には一般人の感覚ではダムにしか見えない大きな堰があるし、支流にはダムがある。
安田川には支流も含め、この写真のようなオーバーフローしている堰しかないから「安田川にはダムがない」と言っていいと思っている。
中流付近の風景。
(2012年03月19日訪問)