2012年3月。毎日毎日、家財を処分する日が続いていた。徳島郊外に借りていた4DKの一戸建には10年間の一人暮らしで溜まったいろいろなモノがあふれ、片付けはいつ終わるとも知れないのだった。
実は私はこの1月に結婚をしたのだ。
結婚後は妻とともに自営業をするつもりなので、徳島の過疎地で土地と家を買って仕事の拠点にするか、群馬に転居して妻が借りている家に住むか決めなければならない。長いあいだ話し合った結果、仕事をしていく上で群馬のほうがメリットが多かったので徳島を離れることになったのだった。
私は四国ののんびりした空気が好きだったし、漠然とこのまま四国に骨を埋めるんだろうと思っていた。
まだ何十年もこの土地で生きていくつもりだったから、この10年間せっせと四国を探検するというわけでもなく、香川、愛媛、高知の3県へは数えられるほどしか出かけたことがなかった。いざ四国を去るとなると、もっと色々と見て回るべきだったという後悔もあるのだが、この数日、長年集めた家財を手放したり処分したりしているうちに一緒に気持ちも身軽になり、四国を知り尽くせなかったという煩悶も軽くなってゆくのだった。
3月中旬になると引越しの手配と家の片付けのめどが立ち、妻を群馬から徳島に呼び寄せた。引越しの際に2台ある自家用車を自走で群馬まで運ぶためだ。
また、今後東日本へ転居すればそうそうは四国や九州を訪れることはできなくなる。この最後の半月で四国と九州をまわることにした。