工房織座

特徴的なマフラーを織り出す工場。

(愛媛県今治市玉川町鬼原甲)

午前中、宇和町で稚蚕飼育所跡などを見たが、訪れた場所は以前の記事「愛媛の蚕糸業」とダブっている部分は省略する。それから八幡浜市に戻り愛媛蚕種へ。愛媛蚕種にはお世話になっていたことから結婚の挨拶に伺ったのだが、話が長引いてしまい八幡浜を発ったときには14時半近くになってしまっていた。

ぼんやりとだがこの日は内子町を見学するつもりだったのだが、だいぶ時間が押してしまい、最後の予定地、今治市へ向かうことにした。妻が愛媛に来たら寄ってみたかったというショップ「工房織座」があるのだ。

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お店に着いたのは17時近く、営業時間ギリギリですべりこみ。無事、買い物はできた。

このお店は工場のとなりにある直営店で、コットンのマフラーやストールなどを販売している。私はあまりマフラーなどを身に付けないので、多くは語れないのだけれど、買ってもいいなと思える商品が多かった。

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たとえば、産地で国産のよい素材を使った手織りの製品ですと言われてもやぼったくて特に欲しいと思わないものもあるなか、織座のマフラーは普通に身に付けられる使い勝手のよいものが目立ち、値段も非常に値ごろだと感じた。

買い物をしたあと、特別に工場を見せてもらえることになった。

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工場はショップのすぐ隣にあり、若い従業員が中心に働いていた。

特徴は、社長さんが織機に精通していて古い織機を改造して現代的な織物を作り出していることだという。

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私は製織業についてはあまり詳しくないので、理解が間違っているかもしれないが、一応、見せていただいたものを自分なりに説明していきたい。

これは古い半木(はんもく)織機をドビー織機のように改造したものだ。たぶん原形となった半木織機は着尺か帯のための平織りの(はた)だったのを、機械制御で複雑にタテ糸を上げ下げする機構を追加したもの。

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この緑色の金属フレームでできている部分が追加された機械。

タテ糸を上げ下げするための綜絖(そうこう)というクシ状の部品が14枚ほどセットできる。(写真は10枚か?)綜絖の枚数が多いほど、複雑な模様を織ることができる。

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それと、多分だけど、ヨコ糸の打ち込みが弱いことも特徴だと思う。

着物や帯だとどうしても打ち込みがしっかりしていて布の目が締まってしまうが、マフラーなどの巻き物では打ち込みを弱く、ふんわりとしたもののほうが肌触りがよい。

こうした柔らかい布を、半木織機で織れるように改造してあるのではないか。

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これはヨコ糸の管巻き機かな。

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この織機には「よろけ(おさ)」という特殊な筬が取り付けてある。

筬とは、写真で布地に一番近いところにあって、前後に揺動してヨコ糸を打ち込むパーツだ。

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通常、筬のスリットは正確に等間隔に並んでいるのだが、この筬は櫛の歯が扇型に波打つように植えてある。これがよろけ筬だ。

この筬でヨコ糸を打ち込むと、タテ糸の位置が不規則に左右にずれ、布地に模様が現われる。

これも織座の布地の特徴的なものだ。

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こちらはヨコ糸に縞柄を入れられるドビー織機。

現代の先端的な織機からすれば織るスピードは遅い。でもそのスピードの遅さが織座の製品を他と差別化しているのではないか。

綜絖の枚数は8枚かな。

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綜絖の上げ下げはこの紋紙というパンチカードで制御している。

現代ではコンピュータ化されていることころも多いのでこうした紋紙で制御する織機自体がすでにレトロなものと言っていいのではないか。

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紋紙はこのように機械にセットされ、穴を読み取り用の針が通ることで、綜絖の上げ下げが決定される。

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その紋紙のせん孔機。

タイプライターみたいな道具で、オリジナルのパターンを入できる。

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こちらはドラム整経機。

紋紙の穿孔にしても、ドラム整経にしても、産地ではそれだけが独立した業態になっている。

こうした道具がすべて工場内で完結しているため、すべて自家都合で機械を温存したり改造したりして、オリジナリティあふれる商品を製造できるのだろう。

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突然の訪問にもかかわらず、工場を見学させていただきありがとうございました。

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なお、工場の前には用水路が流れていて洗い場があった。

(2012年03月27日訪問)

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四国大学新あわ学研究所 (編集)

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