貞光中横の流れ橋の遠景。
その上流に2つの橋が見えている。
このとき私はこれらの橋は抜水橋だと思ってあまり意識を向けていなかったのだが、いま見るとこの2橋は沈下橋だ。
このころはまだ沈下橋というものを自分の中ではっきり定義できていなかったのだ。ここで改めて、沈下橋とはどういうものかという定義をはっきりさせようと思う。
まず、沈下橋の基本として「増水時に水が橋桁よりも上になることを想定している橋」という定義がある。しかし、実際に橋を見ていくと、沈下橋には3つのタイプがあるということに気付かされる。
(1) 橋桁がなく、川底や堰の上にコンクリを敷いて路面を作ったもの。橋というよりは乾いた洗い越しといったほうがいいかもしれない。夕立ち程度でも水没する。➡ 一ノ瀬の沈下橋、モノミ石の取水堰
(2) 剛構造の橋脚と橋桁を持ち、毎年数回は水没し、水流に対して耐久性のある強靭な橋。「沈下橋」という言葉から最も一般的に想像されるもの。➡ 向寺山橋、川島潜水橋
(3) 増水時の水流に耐える作りになっていないが、堤防の外側(河道内)にある橋。10年に一度くらいの増水時に水没し、水没したときの被害はあきらめている、リサイクルできない流れ橋といった感じの橋。➡ 埼玉県の入間川水系に多い。上河原の沈下橋
で、この沈下橋を見てみると(2)と(3)の両方の性質を持っている。
これは下流側にある橋。「長橋」というらしい。
欄干がないので水が乗ることを想定しているけれど、現実に水が乗ったら困る、という橋なのだ。
なぜなら橋床は手前の国道438号線の路面と同じ高さになっているから、この橋に水が乗ったときは、貞光川が氾濫した状態なのである。
こちらは上流側にある橋。「岡の潜水橋」というらしい。
こちらも国道の路面と同じ高さにある。
でも対岸の左岸側を見ると、堤防の上にもう1段高い道路があり、貞光川が氾濫しても市街地に被害が出ないようにしてあるのだ。
逆に言えば、貞光川が氾濫するときは堤防の右岸側に越流させる気なのだ。
そう思って、ストリートビューで右岸側の住宅を見ると川沿いの家々はすべて50cmくらいの土盛りがしてある。
国道まで水没するような増水が何年に一度発生するのか知らないが、自然の川に向き合った治水といえるだろう。
(2007年05月26日訪問)