徳島市の南部にある方上町、渋野町、八多町界隈は里山と沖積平野が細かく入り乱れる場所で、県庁所在地の郊外としては侮れない奥深さがある。
私は関東から徳島に移住するときにこの辺りで住まいを探したのだが、完全に農業地帯で借家がまったく見つからなかった。
この日は、肥壺でもないかなと方上町をブラブラとしていた。肥壺については『阿波國すきま漫遊記 第23話』で紹介するつもりだ。
方上町から「とくしま動物園」へ向かう県道209号線から外れて、くねくねとした旧道を走っていたら、四方蓋造りの民家と石積みが見えた。
その石垣を人口地盤で拡張している。ちょっと面白そうだったので近くまで行ってみた。
よく見ると、写真左には見切れているがみかん蔵もある。
石垣の石は結構細かい変成岩で、この辺りの山の表土を剥ぐとこうした石がざくざく出てくるのではないかと思う。
私が住んでいる家も、敷地はうっすらと表土があるが基本的には岩盤の上に建っていて、ツルハシでも使わなければ庭に穴を空けることもできない。
それにしても細かい石をよく積んだなあ。
みかん蔵の近影。
関東育ちの人間から見ると、本瓦葺ってそれだけでもものすごくかっこよく見えてしまうのだが、それが農業施設に使われていたりするから驚く。
2つ櫓を載せた気品のあるみかん蔵だ。
みかん畑の中にあるので、敷地の外からは屋根しか見えないのが残念。
これは信仰や芸術の目的ではなく、暮らしに必要で造られたものの美しさなのだ。
(2010年01月23日訪問)