
阿南市の日亜化学本社のあたりを走っていたら、道端に珍しいものが置かれていた。
AP-1だ!
タバコの葉を収穫をするとき、作業者が腰を曲げずに座ったままで作業できる専用車両。
アタッチメントを取り付ければ、マルチ張り、定植、土寄せ、農薬散布もできるという非常に優れた機械である。

前側から見たところ。
鳥居型の形状で、タバコの畝をまたぎながら畑に乗り入れる。よく考えられている。
椅子がひとつ転がっていた。定植時には苗を絶え間なく機械に入れる作業に2人が必要で、運転手含めて3人の作業になる。

側面のラックには収穫したタバコの葉を積み上げる。
屋根を取り付けることもできるので、真夏の作業でも日差しを避けられるという、考えられるかぎり至れり尽くせりの設計。

葉タバコはナス科作物で見た目は野菜に近いが、2人で1~2ヘクタールといった圃場を収穫をしなければならない。そのため機械を使った効率的な作業は必須だ。
たとえば同じナス科でも、ナス、ピーマン、トマトなどは乗用の収穫機械は存在せず、人間の体だけが頼り。大規模にやるにはパートさんや海外研修生が必要になる。
ほんとに、すべての野菜の作業がこんなふうに機械化されていたらいいのにね。

ここは近原さんというタバコ農家の畑だった。ちょうど農作業中だったので少しだけ話を聞かせてもらった。

近原さんは現在2ヘクタールのタバコを作っている。
近原さんの先代は南徳島の耕作組合の会長も務めたという大農家である。

塚原さんは戦後からタバコを手がけて60年。現在、県南地域では第1黄色種を生産しているが、以前は違っていたという。昔のことなのではっきりわからないが、第2黄色種だったのではとのこと。
現在、この大野地区には2軒、阿南では7軒のタバコ農家が残っているという。

畑は土地改良された整然とした四角形で、水田、野菜などなんでも作れそう。
葉タバコは過剰な水分を嫌うので明渠排水もできるようになっている。
昨年見てきた阿波葉の圃場とは、同じ作物とは思えないほどの違いがある。

きょうやっているのはわき芽抑制剤の散布。
タバコは芯止めされると、その下にある葉の付け根からわき芽が出るのだ。
私が見た多くの阿波葉農家ではこのわき芽を繰り返し手作業で掻いていた。阿波葉農家でも農薬があるという話は聞いていたが、実際に見たことはなかった。

シャワー状に滴り落ちるほどかけている。わき芽に直接薬剤がかからないといけないのだ。
こんな勢いでかけていると農薬代もかなりいきそう・・・。
それでも手で摘み取る作業を考えると圧倒的に省力化されるのだという。

散布が終わった状態。
薬剤には色が付けてあるので、濡れた箇所がわかりやすい。

散布には

ホースは地面に挿したリールでさばいていくので、一人でも作業できる。
1畝おきに作業をしている。行き帰りで左右の株を処理するのだろう。

すでに伸びてしまっているわき芽には薬が効かないので、見つけたら手で掻く。

黄斑えそ病が出はじめている株。
この病気はジャガイモからアブラムシを介して伝染する。山奥の阿波葉と違って市街地ではこうした病気の伝播はどうしても避けられない。
蔓延すると大きな被害になるという。
銀色のリボンや幕などでアブラムシを避ける資材があるという。

これは肥料が効きすぎてしまった株。
青々しているが商品としては出荷できない。奥に見える黄緑色がうまく生産できている株なのだ。

実は今年は吉野川方面で葉タバコの畑の仕事を見せてもらえる当てがあったのだが、私が春先に病気で入院してしまい機会を逸してしまっていた。
きょうは偶然だがこうして畑仕事を見ることができた。
仕事中、長々と話をしていただき、ありがとうございました。
(2010年06月27日訪問)