赤松川は那賀川の支流だが、徳島の川としてはあまり知名度もない川だと思う。四万十帯の地質のエリアにありがちな穿入蛇行の谷を流れる川である。
初めてこの谷に分け入ったのは川を見るためではなかったが、そのとき水浴びによさそうな場所を見つけ、それ以来何度か訪れている。
場所は県道290号線を最後の集落、川又まで行き、道なりに杉山林道へ入り、林道が橋で右岸に移る場所、その橋の下である。
橋を渡ったところに2~3台くらい車を停められる場所があり、そこから川へ降りることができる。
この場所の特徴は流れが緩やかで橋の下の淵がかなり深いこと。
一番深いところは深さは水深6~8mくらいはあるのではないか。
川に入って川底を見おろすと怖いくらいだ。
と、いってもウエットスーツを着ているので沈むことはない。ウエットスーツの調整用ウエイトも付けているけれど、潜水できるほどの重さではないからどうやってもプカプカ浮かぶだけだ。
この淵は両側が垂直に近い岩の壁だが、大きな石が崖の途中に挟まってトンネルのようになっている場所がある。
ここ、むかしは村の子どもたちが度胸試しで潜水して石の下をくぐったりしたのではないかな・・・。
魚はカワムツとヨシノボリ類がほとんど。
特にカワムツが多い場所だ。
これはタカハヤ。
カワムツ100匹に対して、1匹くらいの割合で泳いでいるので目立つ。
川のハゼ、ヨシノボリの仲間。
ひと目見て、様々な色の個体がいて、正直なところこれらが1種類なのか、別の種なのかさえよくわからない。
一応、それなりの魚図鑑はもっているのだけど、見れば見るほどわからない。
シマヨシノボリかな。
これはオオヨシノボリかな。
ヒレの先に鮮やかな黄色が入っている。
カワヨシノボリかな。
これもたぶんカワヨシノボリではないかと思う。
カラダに白い輪があるのは個体差か。
アカザ。
一瞬しか見られず、赤松川で見たのはこの一度だけ。
川底の石にはハミ跡がところどころにある。
大きさからヨシノボリ類が付けた跡とも思えないので、アユがいるのかもしれない。この場所でアユは一度も見たことがないけれど。
ツチガエル。
カエルって陸上にいる生きものかと思っていたが、渓流の水底でじっとしていた。
サワガニ。
甲羅が水色っぽい。青いサワガニは四国で多くみれらる。
クモの巣みたいなのはヒゲナガカワトビケラの巣。空気に触れない場所で糸を張るのってほんと不思議としか言いようがない。どんな物質で接着しているのか。
ウネウネした管みたいなものもおそらくトビケラの巣ではないかと思うが、よくわからない。
モクズガニも数は少ないけれど見つけることができる。
那賀川河口から赤松川の合流点までざっと50km、そこから赤松川の上流まで20kmくらいはありそうなので、合計70km。
こんな山奥に海と繋がった生態系があるのに驚く。途中には越流堰がいくつもあるが、カニにとっては障害ではないのだろう。
モクズガニの名前の由来ともなった、ハサミについたモフモフの毛が流れにそよいでいる。
あのキチン質の硬い部分に、こんなふわふわした毛があるのが不思議だ。
淵から上がって、上流へ移動する。
途中にひとつ小さな堰がある。
この堰の落ち込みの中を覗いてみたらアメゴがいた。
赤松川でアメゴを見たのはこの小さな滝の泡の中だけだった。こういう場所で流れてくる餌を食べてるんだな。
堰から上流は少し浅い場所があるので河道を歩く。
少し歩くとまた淵が始まる。
流れがあまりない澱みのような淵なので、水に浮かびながら遡るのは難しくはないが、河原がまったくないので水の中しか移動できない場所になる。
甌穴があった。
水の中で甌穴を見たのって初めて。
この澱みにはエビが多い。
もう、気持ち悪いくらいにたくさんのエビがいる。
ヤマトヌマエビ♂。
ヤマトヌマエビ♀。
このエビの幼生は川の流れで海まで下りプランクトン状態を経て、エビの姿に生長してから川をさかのぼってくるという。
こんな小さなカラダでよくもこんな上流まで遡ってくるものだ。
(2007年08月25日訪問)