堰堤工事の架線

砂防堰堤工事の資材を運ぶ索道。

(徳島県吉野川市美郷古井)

古井の地蔵堂からふと横を見ると、谷の反対側へ向かって架線が張られていた。場所は地蔵堂から50mほどしか離れていない。

写真

どうやら向かいの谷で砂防堰堤の工事をしていて、その資材を搬入するための索道のようだ。工事が終れば撤去されてしまう一時的な設備だ。

地図で確認してみると架線の長さはおおよそ250m。

写真

ウインチは架線に対して90度の確度で設置されている。

リールは2つあり、手前側の小さいリールがループする曳索、大きいリールが資材の上げ下げのための単線の荷上索ではないかと思う。

写真

索道は初出になるので、基本的な構造について見ておこう。

(1) 搬器(はんき):索道で荷物を運ぶゴンドラ。この現場では資材を谷の反対まで運ぶだけでなく、吊り下げた荷物を上げ下げできるようだ。

(2) 主索(しゅさく):搬器の重さを支える1本の太いケーブル。搬器はこのケーブルの上を滑車で滑る。ケーブルの直径はおそらく24mmで、ケーブルの重量だけで500kgはある。主索の終端は地面から出ているのでアンカーが埋められているのだろう。

(3) 曳索(えいさく):搬器を牽引するためのケーブル。搬器と荷物の重量は主索が支えているので、曳索は搬器を引くだけのケーブルだ。搬器を往復させるためにループになっている、つまり2本あるように見える。

(4) 荷上索(にあげさく):搬器のところの滑車に繋がっていて、荷物を上げ下げするのに使われる。

この索道のように、主索と曳索の2種類のケーブルで運行するものを「複線」といい、1台の搬器が往復するものを「往復式」という。よってこの索道は「複線往復式索道」と分類できる。

(2002年11月10日訪問)

林業現場人 道具と技 Vol.7 特集 ズバリ架線が分かる 現場技術大図解

単行本(ソフトカバー) – 2012/9/27
全国林業改良普及協会 編 (著)
スパン長100m~1000m超まで、規模の異なる全国の様々な架線現場を取材し、索張りシステムから、仕事の段取り、集材の手順、技術や工夫まで、その特徴を紹介。

amazon.co.jp

索道の敷設や運用について、写真やイラストを多用したわかりやすいムックです。