那賀川左岸、木沢村との境界に近い
那賀川からは標高差で200mくらいある、山の尾根に近い斜面にある集落だ。拝宮谷という行き止りの渓谷を登った先にあるので、偶然に入り込むという人はいないだろう。
標高が上がったぶん日照はいいけれど、とにかく土地の傾斜がきつい。
徳島県山間地の尾根に近い集落は大体が地滑り地形にあるが、拝宮は大きな地滑り地形ではなく、雛壇みたいに細かい地滑りの密集地みたいな地形に見える。よって、大きな平坦地はない。
耕地のほとんどは急傾斜の棚田で、法面は垂直に近い石垣。
圃場は水平で元は水田だったと思われるが、現在は半分くらいの面積に柑橘が植えられている。
拝宮集落のシンボルとも思える大岩がある棚田。
田んぼの真ん中に大きな岩が残っているのだ。これほどの大きさだと人間の力で取り除くことはできない。
おそらくこの岩は地質的な時間の中で山頂から滑り落ちてきて、ここにとどまっているのだろう。
神秘的ではあるけれど、どうやら神社などのご神体になっているわけではなさそう。
現在も水田として利用されている場所もある。
大岩の近くには巨大な木造家屋がある。見慣れない形態の民家だ。ちょっと自分のこれまでの知見ではこれが何の建物なのかわからない。一般の農家の2~2.5倍くらいの細長い間取りで半切妻の総二階。この地域で想定されるのは、林業、タバコ、養蚕があるがどれもピンと来ない。
最近移住してきた人が和紙作りを始めたというような話を聞いたことがあるのでこの建物がそうなのだろう。2階の窓から見えるのは皮を剥いだコウゾの枝かな? 現在は和紙工房だとして、建物の本来の用途ももしかして和紙工場だったのか?
集落内で見かけたカヤグロ。
カヤ(=茅・ススキ)は石だらけの徳島山間地の圃場の土壌改良のためのものだ。カヤは畑にすき込むには一番よい材料だという。かつては屋根を葺くのにも使ったから斜面などをカヤ場として育てていた。
最近では文化保存的な活動で作っている場所もありそうだが、こんなところに観光カヤグロがあるはずはないから、これは実用のために作られた本来のカヤグロだ。
この場所は平坦で本来は田畑にするような場所だが、いまは耕作地も余っていて、カヤ場に利用されているのだろう。
(2008年02月24日訪問)