音羽の索道

索道の下に流れ橋があった。

(徳島県佐那河内村上)

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9月中旬。徳島の山里ではそろそろ稲刈りの季節だ。きょうは棚田のはさ掛けを見ようと佐那河内村へ来てみた。

佐那河内村はこれといった観光地もなく徳島県外にはあまり知られていない土地だが、棚田や段畑の多い、景観の美しい場所だ。棚田については『阿波國すきま漫遊記』の第20話で書くもりなので、いまはこの日見た索道だけを紹介しよう。

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園瀬川の井開に合流する支流の音羽川。その音羽川の谷に分け入ってすぐに索道があった。

周囲には柑橘の畑が点々とある。

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川の反対側も柑橘畑なので、そこから作物を搬出したり、肥料や農薬などを搬入したりするための索道であろう。

形式は複線往復式。道路側が先柱、つまり、動力は対岸にある。電線が渡っている様子はないから、エンジンで運転するのかもしれないが、元柱側は樹の影になっていて確認できなかった。

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先柱。

主索の結束点は螺旋(くい)のようにも見える。それを柱側に引き寄せてテンションを掛けていた。

搬器はこれまでもよく見たタイプ。主に収穫コンテナを積むのだろう。

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架線の下には簡単な流れ橋があった。

橋桁は回収できるようにはなっていないようだ。近くには橋がないから畑に行くにはここを渡るしかないのだろうけれど、これだとちょっとした増水で流されてしまいそう。

これをもって、私が徳島で紹介できる索道はすべてだ。

索道を積極的に求めて見て回ったわけではないから、紹介できたのはごくわずかしかない。徳島県にある常設索道の1割にも満たないのではないか。

振り返ってみると川を渡るタイプの索道が多いことがわかる。急斜面での荷揚げはモノラックが設置することが多いからだろう。もしかしたら川を渡る索道はどれも「野猿(やえん)」と呼んでいいのかもしれない。

(2009年09月13日訪問)

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