
近くで見ていこう。
神社と同じく段丘崖に建てられてて、半地下室がある。
半地下の上は管理室、つまり休憩室や宿直室になっている。

半地下室は桑を保存するための倉庫。涼しい場所で保存して収穫した桑の葉の鮮度を保つ。
この飼育所は人工飼料ではなく、桑の葉でカイコを育てていたということだ。

扉の隙間から貯桑場の中が見えた。
柱や梁はしっかりしていて、金屋稚蚕飼育所の地下室と比較して時代が下るように思われる。

屋根には換気塔が2つ。
外観からして2室の埼玉式稚蚕飼育所だろうと思われる。
大扉が2つあるのは、ここからカイコを出荷した配蚕口だ。

戦後の稚蚕飼育所は全国共通フォーマットではなく、埼玉には埼玉式、群馬には群馬式(土室育)、長野には長野式(天竜育)というように、地方独特の形式があるのが興味深い。

外から見える部屋。
手前は剉桑室、奥が管理室ではないかと思う。

管理室から見て反対側に、主屋から飛び出た小さな小屋がある。

水道施設や浄化槽があるのでトイレと浴室だろう。
通常、こうした水場は管理室の近くに配置するが、管理室の地階が貯桑場になっているため浄化槽が造れなかったのだ。

設計上は管理室と浴室を隣接させ、挫桑場を管理室と離してレイアウトすべきだったと思う。
(2022年01月02日訪問)