再び迫間不動を目指して峠道を上ってゆく。いくらも進まないうちに、この道はただの道ではないことに気付く。道路にはぼんぼりが立てられ、小さな神社、教会、茶屋が点々と続いている。どうやらこの谷全体が宗教的な場所のようだ。地図を見たかぎりではそんな雰囲気は感じさせないし、お寺や神社の記号も書かれていないので、まったく意外というほかない。
どうもこの谷が現在のように栄えるようになったのは、そう古いことではなさそうだ。30年~50年くらいしかさかのぼらないのではないかという気すらする。道端にある教会(寺?)は比較的新しいもののようだが、それなりに信者がついているようで繁盛している。ちょうど家族連れが教会に入っていく姿を見かけた。受験の願掛けか、子供の非行が直るようにとお払いしてもらうのか、はたまた娘に良縁があるようにと占ってもらうのか‥‥真剣な雰囲気が漂っていた。
私は他所者なので、その土地の信仰については想像する以外にはないのだが、おそらく不動明王を信奉する行者たちが集まって坊を構えている谷なのではなかろうか。
行者の霊験をたよって各地から集まる信者を目当てに、いくつもの茶屋ができたのだろう。何もない山中に何軒もの茶屋を維持できるほど信者がいるということはすごいことである。
しばらく進むと、数件の茶店がかたまっている先に無数の幟旗が立っている場所に出くわした。
日乃出観世音である。広い駐車場があり、気軽に参詣できそうなので、立ち寄ってみた。
日乃出観世音のふもとには、2ヶ所から水が湧いており、ポリタンクを持って水を汲む人たちが並んでいた。
私は車に常備してあるマイ・マグカップに冷たい水をくんでのどを潤した。のどが渇いていたのか、美味しい水だったのか、3杯も飲んでしまった。
ふと、振り返ると道路の対面に濃密な雰囲気の寺がある。どうやら日乃出観世音は対面の山にある寺、日乃出不動尊の持ち物らしい。
(2000年04月30日訪問)