宗休寺、またの名を関善光寺という。○○善光寺とくれば当然期待してしまうのが戒壇巡りである。期待にたがわずこの寺には戒壇巡りがある。それも「卍戒壇」と呼ばれる複雑な構造の戒壇らしい! 前々からどうしても見てみたかった戒壇巡りであり、それが今回の旅が長良川・飛騨方面になった最大の理由でもあるのだ。
関市の北側には高さ100m、外周3Kmほどの独立した小さな山がある。安桜山という。商店街の裏手から急峻な斜面が立ち上がる光景は、いかにも寺町を形成しそうな地勢であり、事実、南面はちょっとした寺町になっている。山を外周する細い道路に沿って寺々を巡っていくと、寺町の突き当たりに宗休寺はある。

駐車場に車を停めると、立派な石垣の上に善光寺風の建物が見えてくる。
善光寺風という様式は、別に建築学上の定義があるわけではないが、入母屋、妻入り、裳階付きで、正面向拝に唐破風があり、背面には神社の権現造のような乗り越しの屋根がある建物と考えればよい。向拝部分には外部に階段をもち、外周には濡れ縁の勾欄を巡らせている。内部は手前と奥とで外陣と内陣を直線的に区別しているのが特徴だ。

いよいよ卍戒壇を見られると思うと、足取りも軽くなり、石段も一気に駆け上がる。
境内には堂が多い。
石段を登ったところ、写真左から水盤舎、大日堂(六角堂)、休憩所。

奥から、茶店、大師堂、行者堂。

卍戒壇に行く前に、まず本堂について触れてみよう。

本堂は「大仏殿」とも呼ばれ、その内部には丈六の阿弥陀如来と脇侍による三尊仏がまつられている。いわゆる善光寺の三尊仏といって、善光寺系の寺の本尊によくあるパターンである。本来なら「関大仏」と名乗っても許されそうな仏だからもったいない感じもする。
内部は五色の布や桜で飾られ、金箔の仏像とあいまって、かなりありがたい雰囲気を醸し出している。

駐車場から見えていた善光寺風の建物は本堂の左側にある。

本堂と善光寺風の建物は渡り廊下で接続していた。
渡り廊下には鳥居がついていて、扁額には「竜頭稲荷」とあった。渡り廊下の上にある祭壇がそうかなと思ってそれ以上探さなかったが、実はこの渡り廊下を潜って境内の奥のほうにあったようだ。

そして、いよいよ卍戒壇を擁する善光寺風の建物へと向かう。
この建物、入ると本尊を拝むでもなく、いきなり戒壇巡りへといざなわれる雰囲気で、戒壇巡りのためにだけ機能している堂と言ってよいだろう。

これが問題の戒壇の入口だ。左が入口、右が出口となっている。入場料は大人200円。
一般に戒壇巡りの内部は真っ暗なので、左右いずれかの壁に触れながら手探りで進むことになる。したがって、私が今までに見たかぎりでは戒壇巡りで通路が分岐しているものは知らない。下手をしたら進行方向さえわからなくなるような暗やみの中で分岐というのは厳しすぎるのだ。

「卍」の字をみると、中央の十字部分で4つの通路が合流(3分岐)することになり、その部分の処理がどうなっているのかとても興味がもたれる。
ではさっそく入ってみよう。
階段を下り左に90度曲がると途端に目の前は真っ暗やみになる。しばらく進むと右に90度曲がり、さらに右に90度、通路は直角にしか曲がらないので、わりと自分の位置関係は把握しやすい。

また右に90度、左に90度・・・ん? ちょっと待て! どう考えても卍の字になっていないぞ! と思っているうちに出口の明かりが見えてきてしまった。
どうやら左の図のようになっているようだ。これを卍と言っていいのかどうか、それは皆さんの判断にお任せしたいと思う。
私個人の感想としては、最初からなんとなく予感はしていたのでショックは少なかったし、これでも戒壇としては複雑なほうなので十分に楽しめた。
(2000年04月30日訪問)