海岸部を離れ、JR気仙沼線に沿って内陸へと向かう。志津川町から小さな峠を越えると、津山町の横山という集落へと着く。国道をそれて旧道へ入ると横山宿である。古い民家はそう多くはないが、かつては中央に水路があったろうかと思われる宿場町の風情を残した町並みになっている。
その町並みの途中に横山不動という寺があった。
旧道に面したところに釘貫門、しばらく進むと鳥居、その先に山門がある。伽藍配置は左図のごとくだが、撮影した写真の解像度が足らなくて、いくつか名称があっていないかもしれない。
寺なのに鳥居、しかも不動尊なのに宗派は曹洞宗と、なんでもありの寺である。東北ってほんと懐が深い。
楼門はちょっと背の高い江戸建築。唐破風や彫り物などでゴージャスな感じ。
隣にあった袴腰鐘楼も妙に背が高い。
袴腰部分は鎧張下見板で、しかも角度が急すぎないか?
三陸地方にはこんな鐘楼が多いように思えるのは気のせいだろうか。
楼門を入ったところには池がある。池の中には薬師堂(たぶん)が浮かんでいる。
薬師堂への橋は楼門側にはなく、本堂のほうから戻るようにして渡らなければならない。
この池にはウグイが棲みついていて、国の天然記念物に指定されている。
「この池は石巻までつながっている」と話しているオヤジがいた。(ただ、なんだかそのオヤジは次から次へと出まかせのホラ話をしそうなしゃべり方だったので、本当にこの寺にそういう伝説があるのかはわからない。)
池の手前には小川があり、池とつながっていて、ウグイは自由に川と池を出入りできる。
産卵や繁殖は外の大きな川で行ない、成長するとこの池に戻ってきて棲みつくらしい。ここにいれば餌に困らないからなのだろうか。何百年もここで餌をあたえてきたために成立した生態系と言えるだろう。
本堂も楼門と同じような雰囲気のゴージャスさ。
本堂の上には小さな越屋根が載っている。とにかく普通じゃイヤなのであろう。
本尊は不動明王の座像で丈六仏。つまり大仏である。平安時代の像といわれていて国重文に指定されている。
本堂の左側には寺務所。
伽藍配置図で見ると、とても大きく書かれているが、現物は小さな建物だ。お札などを売っている。庫裏はさらに左手のほうへ行くと、離れたところにある。
境内にあった青銅製の五重塔。
江戸中期のもので県重文。高さは基壇を除いて本体部だけで3.5mあり、なかなか立派なものだし、青銅製の五重塔というのは珍しい。
各層の屋根の角の部分に蕨手がついているのがエキゾチックだ。欲を言えば2層以上についている巨大な花頭窓はなんとかしてほしいところではあるが。
境内には他に鎮守社(写真)、奥の院など。
(2001年08月14日訪問)