石巻市の南部の海岸沿いには埋め立てで造成れたような新興の土地があり、スポーツグラウンドやら汚水処理場などが作られている。その地域に通称“濡れ仏"と呼ばれる露座の釈迦如来銅像がある。
伝説では京都で鋳造された銅像を輸送中の船が難破し、数十年後に引き上げられたのだという。長い間海中にあったため今でも仏像の肌が濡れているように感じられるというのだ。
おりしも真夏のカンカン照りの午後。海岸の砂地の真っ白な地面はまぶしいばかり。濡れ仏の真価を問うのには持って来いの気象状況と言えよう。
本堂(兼庫裏)は質素な造り。有り体に言えば普通の民家とあまり変わらず、表に看板が無かったら寺とはわからないようなたたずまいである。
濡れ仏の前には鰐口堂があった。
そしてこれが濡れ仏。
基壇が何重にも高くなっているのだが、参拝客が仏にタッチできるようにタラップが付けられているのだ。
それだったら基壇をもう少し低く造ればよいと思うのだが、ご覧のようなありさま。
仏自体は高さ2m程度で、大仏の基準たる2.4mにおよばないから、基壇で威厳を持たせたいというところなのかもしれない。それにしては両側のタラップがまるで児童公園の遊具のような風情。
しかしこれはこれで気に入った。何が何でも大仏にタッチさせようという即物的な発想がいい。(内部2階造りの大仏殿のある寺も、この発想を見習って参拝客を2階の欄干に登らせてほしいものだ。)
で、実際に大仏にタッチしてみたがしっとりはしておらず、予想通り真夏の太陽に焼けた銅像であった。
テラテラと光って見えるのは、ちょうど公園の鉄棒や雲梯の鉄が黒光りしているような感じの表面になっているからである。
(2001年08月15日訪問)