仙台市内から北東の方を眺めると、いやがうえにも目に飛び込んでくる白亜の物体がある。仙台大観音である。
高さ100mはあるというから、ビルで言うと25階程度の建物ということになり、都心は別として地方都市では他に抜きんでて高い建造物(?) といえよう。
しかも、建っているのが山の稜線になるので、その高さが際立つ。
茨城県には高さ120mの牛久大仏という立像があるが、平地だし見渡しがきかない場所にあるのでどうしても目立たない。実際、牛久大仏はかなり近くまで行かないと見つけられないのだ。
それに比べると仙台大観音は立地が良く、100m という大きさを存分に誇示している感がある。
大観音があるのは山の稜線といっても山野ではなく、辺りは無残に造成された味気ないニュータウンが延々と続いている地帯である。一角は泉区のショッピングゾーンで、観音の敷地にもホテルやペットショップなどが建っている。
駐車場はタダ。境内はショッピングゾーンでもあるので拝観(外から拝むの)も基本的にタダ。胎内拝観は500円だ。さっそく中に入ってみよう。
入り口には巨大な龍が口をあけている。登竜門と言って出世の道を表わしているという。この大観音はニューワールドグループという企業が後ろ盾となって建立したようだ。ニューワールドグループはゴルフ場、ホテルなどの多角経営で財をなした企業である。それにあやかってどんどん出世してくださいということなんだろうが、どうも日本では観音と立身出世の現世利益というのはあまりピンとこない組み合わせだと思う。
一階には土産物売り場があり、十二神将像などが置かれている。
観音の上部へはエレベーターで登るが、エレベータホールまでの通路は暗くて、賽の河原の模型がおどろおどろしくライトアップされている。
私が行ったときには小さな子供連れの親子がいたのだが、子供が泣いてしまってどうしても先に進めないようだった。
エレベータで最上階まで上がると、黄金の部屋があり、その中心の宝塔に純金の玉が収められている。この玉がこの観音の御心体(ごしんたい)なのだそうだ。
仏教の場合は胎内仏というのはあるが、あまり「御神体」というのは言わない。どちらかといえば神道の用語だ。観音の本質は観音であって、他のモノが本体であるというのはどうなんだろう‥‥。珍寺大道場のレポートによれば、この玉はニューワールドグループがパチンコ業界から発展したことに由来するという。
さて、黄金の部屋を抜けていよいよ観音の胎内に入っていく。
観音の胎内は空洞で、60mほどの吹き抜け空間になっている。
中心部には八角形の心柱がある。この心柱は観音の外壁とは接しておらず、内部はエレベータのスペースになっている。したがって心柱は荷重を支えているものではない。(観音の頭部の荷重は支えているかも知れない。)
つまり観音の基本構造は外壁で荷重を支える「壁構造」なのである。
そしてその壁の内壁にそって螺旋状に階段があって、歩いて降りることができる。(途中で疲れたら中央部の柱からエレベータに乗ってもよい。)
中央の柱には一階ごとにデッキが取り付けれれていてそこに総計108体の胎内仏が収められている。デッキと螺旋階段は渡り廊下でつながっていて、その渡り廊下は階ごとに180°反対の位置になっている。
デッキと螺旋階段には電飾がされているので、吹き抜けの空間をのぞき込むと光がトンネルとなって見える。これは宗教的な体験というより、現代的な建築空間の体験としても、ちょっと他では味わえない荘厳なものだ。
そもそも、高層ビルにある大規模な吹き抜け空間は強化ガラスなどで封じてあるのが普通だ。ここのように1mそこそこの手すりから身を乗り出して下を眺められるような吹き抜けは国内には他にはないのではないか‥‥。
ちなみに私はこのように柱や壁から持ち送りなしでせり出した片持ち梁の通路というのが苦手で、立っているだけでお尻の穴のあたりがむずむずしてくる。階段もなるべく壁に近いところを歩いてしまう‥‥。
中央デッキの胎内仏の様子。
どれも大理石でできた均質な感じの仏像で、すぐに飽きてしまった。
全部で九層ある。
本堂。
観音はレジャー施設というわけではなく、一応、寺に属している。寺の名前は真言宗智山派大観密寺。
鎮守社。
鐘堂などがある。
(2001年09月23日訪問)