阿波町で辻時計を見たあと、脇町の大谷という場所へ来ていた。以前、夜この道を通ったときにアイスの自動販売機を見かけたので、陽のある時間帯に撮影しておくことにしたのだ。
脇町から大谷川へ分け入る細い道。先には急傾斜の集落があるだけ。山並みの景色は、徳島県民が見たら吉野川の南岸の山なのか北岸の山なのかなんとなくわかる。ここは北岸の山で、和泉層群という地質帯の阿讃山脈らしい山容なのだ。
谷川にそってうねうねと登って行くと、ぽつんとよろず屋がある。前後にまったく人家がない場所に1軒だけある商店なのでけっこう印象に残っている人も多いのではないか。
名前は、西野康夫商店。
かつてはここから奥の山村の人たちの、酒、塩、野菜の種、郵便物など手広く取り扱う頼りになるよろず屋だったのだろう。
現在も営業しているが、往時の勢いはなく、閉業するのを静かにまっているという風情。
「曽我部ほねつぎ」という木製の看板が気になる。
かつてこんな場所に大きな商店があったのだという記録をとどめるためだけにも紹介しておきたい物件だ。
目的のVIVO自販機は、コカコーラの新鋭機種の横に置かれていた。
夜に通ったときには暗闇の中で見たので、「もしかして稼働してる?」とも期待してきたが、当然のように非稼働だった。
ロッテのアイス自販機はかつて全国的に見られたと思うが、これはロッテが展開していたというよりも、自販機ベンダーのVIVOがロッテからアイスを仕入れて配給していたものなのではないかと思う。
ゆえに、ロッテの自販機、というよりは、VIVOの自販機としてジャンル分けしたいものだ。
お店のおばあちゃんにたまたま話を聞いたら、買い取りの機種でアイスはけっこう売れたという。あるとき、夜に車をぶつけられて少し傷がついてしまったのが悔しいというようなことを話してくれた。
オーナーに大切にされてきた自販機だったのだろう。それゆえ、古さを感じさせず、使わなくなったいまも状態よく残されていたのだ。
2021年現在、西野商店は閉業しているが、まだ自販機営業は続いている。残念ながらVIVO機は撤去されてしまった。
(2004年10月24日訪問)