浄土寺

石でできたウミガメがある。洞窟があるが奥行きは浅い。

(愛知県南知多町豊浜小佐郷)

行程は知多半島の南端、羽豆岬を回って伊勢湾側に入る。直前に寄った影現寺からは結構な道のりだ。途中になにも見るべきものがないというわけではない。それどころか羽豆岬は半島の突端の港で観光地らしい場所だったし、探せばきっと美味い魚を食べさせるような店もあっただろう。

だが、昼ごろには貝がら公園に着きたいと思っていたのがすでに1時になっており、すこし途中をはしょることにしたのだ。とりあえず貝がら公園のある南知多町豊浜まで着いたので、豊浜の寺を見ておくことにした。貝がら公園を見てしまえば、もう一度この豊浜を訪問する可能性は低そうだったからである。

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浄土寺は豊浜の東の入り江にあった寺。またの名を手引大師龍亀大菩薩。山門は長屋門。

港町の寺のご多分に洩れず、参道には駐車スペースがない。みたところ長屋門の中まで車で入れそうだったので、おそるおそる境内まで車を乗り入れた。

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するとすぐ後から巡礼をのせた大型ワゴン者が長屋門を通って入ってきた。この寺は知多三十三観音の札所になっているようだ。それにしても、自分としても境内まで車で入るのはかなり無茶だと思ったのだが、運転手がいるのであれば門前で巡礼を降ろしてもいいのではないか‥‥。巡礼たちは車を降りるやいなやすごい勢いでご詠歌を唱えている。

本堂は寄棟造りで、長屋門同様ちょっと家大工の仕事っぽい質素な建物だった。

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庫裏は本堂の裏側にある。土地の少ない港町の寺の伽藍配置の工夫であろう。

本堂の前には水盤舎、大菩薩堂(写真)。

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その手前には洞穴のようなものがあった。

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期待して飛び込んでみたが穴はあまり深くなく、内部はすぐ行き止まりになっていた。

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洞穴の前には大きな亀がいた。これが龍亀大菩薩であろうか。なかなかリアルな造形である。

ところで、私が亀を見ているあいだに巡礼者たちは納経を済ませて再びワゴン車に乗って出発していった。私も一日に何ヶ寺も巡る関係から自分でも浅ましいと思うほどにせっかちに参詣している。その私より後から来て、納経して、先に出て行くという巡礼とは一体何者なんだろう。カーラリーか何かと勘違いしているのではないか。

(2001年11月25日訪問)

まっぷる 旅でめぐる法然上人 (まっぷるマガジン)

ムック – 2023/9/11
昭文社 旅行ガイドブック 編集部 (編集)
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