いよいよ日も落ちて、寺参りにはあまり適さない時間帯になった。次に訪れた浄念寺では、山門が閉じられていて、境内をの様子はうかがうことはできないようだった。
しかたがないので、塀の外から本堂の写真を撮って、次の寺へと向かったのだが、帰路で正門が開いているのに気付きあとで本堂を撮影しなおした。
本堂は都市の寺町でよく見かける2階建RC造陸屋根タイプだ。間口の蔀戸風のサッシュは大阪万博の松下館を思わせる。
こういう陸屋根の本堂を若いころの私はモダニズム建築の合理性が導いた無味乾燥な帰着点のように感じていた。しかし振り返ってみると、このような建築がある時期に集中して建てられ、その後の時代にはあまり作られなくなったということから、このカタチは「必然」ではなく「様式」であると言ってもいいように思える。
通常、木造の本堂は入母屋の大屋根であるから、遠目にも目立つし、近くで見上げても威厳を感じさせるものだ。しかし陸屋根にすると建物の背が低くなって威厳が失われる。そこで、玄関を2階にする工夫をしたのだろう。
もしかしたら、建築雑誌などで紹介され、他の設計のひな型なった原初の建物がどこかにあるのかも知れない。
帰路に寺の裏側を通ったら、そちらの門は開いていた。区画整理で寺の裏側に広い道ができていて、現在はそちらが正門になっているようだった。
正門の横には庫裏、鐘堂があった。
(2002年08月26日訪問)