ホーム広島の仏殿と屋根付橋(1日目)

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広島の仏殿と屋根付橋(1日目)

前年の中国地方の旅のつづき。福山市山野地区では予期せずたくさんの茶堂を見かけた。

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香川県高松市から岡山県宇野港を結ぶ宇高航路は、瀬戸大橋が開通したあとでも多くの車が利用する人気航路だ。3社が同じ航路に就航していて、1日約100往復の便がある。桟橋からひっきりなしに出るフェリーには、24時間いつ車を乗りつけてもほとんど待たずに乗ることができるのである。

2002年8月末のある夜、私は高松港から宇野港へ向かうフェリーのデッキにいた。常連客が多いせいか、デッキに出て真っ暗な海面を眺めているのは私くらいのものだ。華やかな高松の夜景が遠ざかり、瀬戸内の名も知らない島々のシルエットが過ぎていくのを眺めていると、旅の始まりの高揚感はいやがうえにも高まってくるのだった。

ところで、今回の旅の始まりがなぜ高松なのかといえば、この年の5月、私は横浜から四国の徳島へと転居していたのである。その最初の夏季休暇を利用して、広島へ向かうことにしたのだった。前年の「山陽の塔巡り」の旅で訪れる予定だった広島方面のつづきである。前年の旅では、岡山は途方もなく遠く感じられた土地だったが、今回は家を出て3時間で岡山の地を踏んでいる。あらためて、遠いところに転居してきたのだなあと実感する。

旅の初日の目的地、広島県の福山市は、早朝に家を出ても十分に観光できる距離なのだが、私は早起きが苦手なので、夜のうちに福山市に着いて、車の中で寝ることにしていた。8月ともなれば車の中は暑くて寝苦しい。そこで福山市郊外の渓流沿いのキャンプ場の駐車場で仮眠することにした。ここなら車の屋根を開ければ、かなり快適に寝ることができる。

目が覚めるとすでに9時ちかい時刻だった。それでも9時前に目的地で活動を始めていれば、私の旅としては上々のスタートである。初日の旅の行程にはこれといって著名なスポットは含まれず、気が乗らなければ軽く流そうかと思っていたのだが、単に仮眠するだけの予定だった福山市の郊外、山野地区で思いのほか時間を過ごしてしまったのだった。