壽徳寺

妻入りの向唐門、本堂には巨大な唐破風向拝。唐破風が目立つ寺だ。

(広島県三原市西町2丁目)

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日蓮宗、壽徳寺。

大善寺の裏手にあり、寺町では最も谷の奥になる寺だ。

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山門は向唐門の四脚門。

向唐門といっても、よく本願寺別院にあるような切妻平入りの屋根の正面に大きな唐破風が付いたタイプではなく、切妻妻入りで全体が照り起りになっているような門である。

これを向唐門と言うのが適当なのかどうか、ときどき疑問になる。

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門の格から言えば、通常の切妻の四脚門よりちょっと上かな、と思うのだが、ボリューム感のなさは否めない。貫の上に肘木を介して敷き桁が載せてあるだけなので、いかにもスカスカな感じがしてしまうのだ。

このタイプの向唐門にほぼ共通して感じる印象だ。

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山門を入ると右側に袴腰鐘楼。

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本堂は異常に巨大な唐破風向拝がついている。

最上稲荷の本堂を思い出した。

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境内には他に庫裏、東司。

庫裏の玄関にも唐破風がついている。全体に唐破風が目立つ寺だった。

これで、この1日のレポートはおしまいである。午前中に茶堂が多かったとはいえ、1日に58個所のスポットを紹介したのは、このサイト始まって以来の記録ではなかろうか。実はこのあと何ヶ寺かを廻ったのだが、暗くて写真の写りが良くなかったので、次の日の朝に再訪した。レポートもそちらにゆずることにしよう。

これから宿探しとなる。このころの宿泊パターンは、駅に行って市街案内図(ボタンを押すと地図上に電球が点灯するやつだ)で旅館を探すか、駅近くの公衆電話で電話帳を調べるというやりかただった。日暮れた見知らぬ駅で路駐する場所を見つけ、疲れた足を引きずりながら掲示板や電話ボックスを探すのは、いつもいつも心細い瞬間なのだが、旅をふり返ってみるとけっこういい思い出になるものだ。

疲れていたので畳の部屋があることを確認して、素泊まり4000円という旅館に決めた。古ぼけたその宿は中庭を囲むように建つ2階屋で、まさに昭和の木造ビジネス旅館を体現したような建物だった。家族経営と思われる気の置けない宿で、私が飛び込みの旅で泊まったなかではかなり良い印象だと言えるだろう。

この日は記録的な猛暑で、部屋に入ってシャツを脱ぐと、カラーTシャツが汗の塩で真っ白になっていた。普段なら街の銭湯やスパなどに出かけるのだが、さすがにもう車で外出する気力もなく、近くのコンビニで弁当とたっぷりの甘いものを調達して夕食にしたあと、宿の熱い風呂に入ってすぐに眠りについたのだった。

(2002年08月26日訪問)