郷原西稚蚕共同飼育所

木造飼育所だが改修されて座繰作家の工房になっている。

(群馬県安中市郷原)

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さきほど見た郷原の飼育所から、西へ100mほどしか離れていないところに、もうひとつ土室育標準型の飼育所が残っている。

ここは国道18号線に直接面していることからわかりやすい飼育所だ。飼育所巡りの目的以外で漠然と道を走っていて気付いた数少ない飼育所のひとつだ。

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建物は東西に建っていて、東側が配蚕口。

配蚕口の戸はアルミサッシュになっていて、建物は補修されている。越屋根の窓もサッシュに取り換えられている。

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炭火用の換気口はコンクリでふさがれている。

サッシュを取り付けたときに内部も改装されたのだろう。

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実はこのとき、この飼育所は座繰作家・(ひがし)宣江さんの工房・蚕絲館として使われていた。(2010年現在は別の場所に移転)

座繰(ざぐ)りというのは、人手で繭から生糸を作る手法のこと。富岡製糸場のようなやりかたを「器械製糸」といい、それに対する言葉が「座繰製糸」だ。群馬県はいま富岡製糸場を世界遺産登録しようとしているが、歴史的に見れば群馬県の製糸の特徴は座繰製糸組合による生糸生産なのである。

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東さんは、群馬の特徴的な糸取りである座繰を再現し、特注に応じた糸を小口生産している。

内部の様子はこんな感じ。繭がたくさん置かれている。

小屋は木造トラス、室は作業場や物置として使われていた。室に障子が取り付けてあるが、これは蚕絲館で取り付けたものだという。室はかなり手が加わっているがブロック電床育だったようだ。

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左写真で障子がある部分はもと挫桑場だが、部屋に改装されていた。

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蛇のお札が貼ってあった。繭をネズミがかじるため、そのネズミを食べる蛇を神社から借りてくるという信仰にもとづくものだ。

このお札を出しているのは、安中市の咲前(さきさき)神社

(2008年05月03日訪問)