少し移動するうちに、また晴れてきた。
途中2ヶ所で飼育所が見つからず、3ヶ所目がここ新井稚蚕飼育所。
ここも古そうな木造の飼育所だ。
現在は農家の車庫になっているが、戸が開いていて中が見えた。
一般的な飼育所では4枚の引き違い戸がある側が飼育室で、反対側が宿直室と挫桑室になっている。ところがこの飼育所は、戸のある側に挫桑室と宿直室があり、奥が飼育室になっていた。つまり、戸を開けるとすぐ挫桑室になっているということだ。
さらに興味深いのは、車庫に改造するために室を取り払っているのだが、その部分の壁の様子がどうも、もともと土壁だったところをはがして、その跡にブロックを積んだような細工にみえることだ。
外観を見ると越屋根の位置が道路側に寄っている。もしかするとこの飼育所は、建った当初は道路側が土壁で土室育の飼育室だったのを、途中で壁ごと土室を取り除いて、道路側を挫桑室、奥側をブロック電床室に作り替えたのではないだろうか。
そういう工事が可能だとすると、さきほど見た小日向稚蚕共同飼育所が外観は土室育なのに内部が新しかったというのにも合点がいく。しかも外壁がモルタルという点も共通している。
道路から見て奥側2間分はあとから建て増ししたのではないかというような感じだ。屋根瓦の風合いもちょっと違うような気がする。
その建て増ししたと思われる部分の床下に地下室への入り口があった。
地下室への通路は天井が低く頭をぶつけそうだ。
しかも内部がすぐ貯桑室になっているのではなく、道路側のほうへ通路が続いている。
貯桑室はかなり広いが、搬入口から階段までが遠いので、動線としては無駄な動きが多いように感じられる。
道から反対側。
こちら側はブロック電床育の飼育室で、通常の配蚕口になっている。両側が配蚕口のようになっているわけだ。
小さな飼育所だが、木造飼育所がブロック電床育に改造できるというヒントが得られたという点で、重要な飼育所だった。
(2008年05月03日訪問)