以前に掲載した、国峰中組稚蚕共同飼育所のレポートの2枚目の写真を見ていただきたい。写真の右手奥に、ピンクの壁の二階屋とミントグリーンの壁の小屋が写っている。
これから紹介するのは、そのミントグリーンの壁の小屋「国峰の集乳所」である。
2008年、この付近の稚蚕飼育所巡りをしたときに見つけたのが国峰中組稚蚕共同飼育所だった。そしてそのとき、飼育所に隣接して建てられている集乳所は、まったく見えていなかっのだ。これは自分でもさすがに情けない。ほんの少し注意をはらえば、飼育所の隣に怪しい機能をもった建築があったことに気付いたはずなのに。
2013年のいまでは、これほどわかりやすい集乳所を見落とすことはあり得ない。だがそれでよしとする気持ちにはなれないのだ。
2008年に集乳所に気付かなかったのと同じように、ほんの少しのことに気付かず、いまでも何か重要なものを見落としているのではないか、どうしてもそんな恐れをいだいてしまう。
建物はブロック造で、2つの扉があるが、内部はつながっている。
左側には車庫、右側には牛乳缶をトラックの荷台に積み込むためのプラットホームがある。
プラットホームは建物の隅に取り付けられているが、建物とは独立しており、利用するにはいったん建物の外に出なければならない。
プラットホームというより、タラップという表現が近いかもしれない。
プラットホーム上から見た集乳所の建物。
室内を見てみると、がらんとしている。ワラなどが落ちているので、いまでも酪農に関連する設備として使われていそうだ。
右側に水槽と、奥にポンプっぽい機械が見える。機械はヒートポンプかもしれない。水槽は牛乳缶を冷やすのに使ったのだと思われる。
このように、水槽に牛乳缶を入れて冷やしておき、乳業のトラックに積み替える方式をドロップクーラー型集乳所と呼ぶようだ。
だが水槽は思ったより小さい。こんな小さな水槽で、集めてきたすべての生乳を冷やすことができるのだろうか。そして、水槽以外の床面が広いが、そこでは何をしたのだろうか。
まだ集乳所の使われ方では不明な点が多い。
いずれ聞き込みなどで集乳所の使い方もわかっていくことだろう。そして、そのころには酪農関係の施設全般の鑑定眼も鋭利になっているはずだ。
そのときには、たとえばこの集乳所の隣にある廃虚っぽい小屋も、いまとは違って見えるのだろうか。
これまでこのサイトでは「牛舎」については腰折れ屋根のしゃれた建物しか鑑賞の対象にはしてこなかった。だが、このような越し屋根を載せた切妻造の牛舎にも、木造のものには見どころのある建築がありそうな気がする。
この牛舎などは、越し屋根型牛舎の現代的な劣化版かもしれず、念のため写真を残しておこうと思う。
(2013年10月07日訪問)