国道254号線を藤岡市から富岡市に向かって走ると、上州新屋駅南の交差点に「左折小幡」の道路標識がある。あるときの夕間暮れ、小幡町へ向かおうとしてぼんやり運転していて、この道路標識を見て左折してしまった。
小幡町の場所を知っている人ならわかると思うが、この道路標識はまったくのミスリードで、ここを曲がっても近いわけでも、道が広いわけでもない。むしろ、遠くて道が狭く、途中に峠があるという、なんのメリットもないルートなのだ。正しくは、もっと西進して上州福島駅北の交差点を左折すべきなのだ。
すぐに道を間違えたことに気付いたのだが、どうせなのでこれまで通ったことのない白倉集落方面を通って小幡町へ向かうことにした。その行程で、道ばたに集乳所を発見した。怪我の功名である。
その日はもう暗かったので後日訪問してみた。
養蚕農家の建物に挟まれるようにしてその集乳所はあった。
これまでに紹介してきた中で、最もコンパクトな集乳所だ。
小さくてブロック造とはいえ、屋根の妻の破風板が緩やかにカーブしていて、まるで辻堂のような雰囲気があるため見栄えがよい。
人間用の入口は側面にあり、階段で上るようになっている。
道路に面した扉はプラットホームになっていて、牛乳缶の搬入搬出に使ったのだろう。
機能が凝縮された惚れ惚れするようなルックスである。
裏側から見たところ。
内部には一部、ツタが侵入している。
床をみると、井戸と思われる穴があった。
ポンプアップして牛乳缶を冷やしたものと思われる。
室内には、酪農組合からの表彰状が飾られていた。
「良 鏑泉酪農協同組合白倉支部殿 昭和三十四年度群馬県原乳品質改善コンクールにおいて審査の結果優秀な成績を収められたので賞金を贈りこれを賞します」とある。
あっ! 高瀬の集乳所で聞いた「テキセン」って「鏑泉」って字だったのか。音だけじゃまったく想像できなかった。
ところで、小幡町への道路標識としては、県道193号線の馬山にある「右折小幡」標識もひどい。確かに、このT字路を右折すればいずれは小幡町へ行けるのは間違いないのだが、途中は心細くなるような細い峠道。こんなルートへ誘導する必要があるのだろうか。上州新屋駅南の標識と、同じ担当者が策定したのではないかと思う。
(2013年04月03日訪問)