富岡市街の南西、鏑川の南岸は高瀬という大字である。百八灯が行われる大島とは隣にあたる。その集落の中に「高瀬会館」という名前の集会所がある。
あるとき、この集会所の前を通ったら、裏手にブロック造の小屋が見えた。
これがその小屋である。
数年前なら、この小屋の存在に気が付くことはなかったであろう。
だが、いまではこれが集乳所だとわかる。不思議なものだ。
道路側にプレートが掲げられているが、文字は完全に風化していて読み取ることはできない。
一応「高瀬の集乳所」としておこう。小字をとって「横瀬の集乳所」でもいいかもしれない。
建物は、ブロック造の集乳所と、その横に別棟の小屋があった。防災倉庫かなにかであろうか。
小さいほうの小屋の定礎は「昭和三十九年四月十日完成」とある。
集乳所の内部をのぞいてみると、冷却設備のようなものは何も残っていなかった。
近くで話を聞いてみると、集落の20戸くらいの農家で共同で利用していたという。各戸は1頭飼いの家が多かった。冷却設備はなく、牛乳缶は農家の井戸水で冷やしておき、朝、集乳所に運び込んでおくと、午前10時ごろまでには乳業の車が集荷にきたという。夕方の搾乳と翌朝の搾乳分が同時に出荷されたのであろう。出荷先は「テキセン(?)」という酪農組合だったという。
ここまで見てきたなかで、集乳所の冷却パターンが幾つかみえてきた。すなわち、
- 冷蔵設備がない、単なる集荷施設。
- 水槽に牛乳缶を沈めて保管する施設。これをドロップクーラー方式という。
- 牛乳缶ではなく生乳を大型のステンレス容器に移し替えて冷蔵する施設。これをバルククーラー方式という。
の違いである。いずれは施設の遺構をみただけで、これらの違いが見分けられるようになるのだろうか。
横瀬近辺の集落の風景。
(2013年05月27日訪問)