中井稚蚕共同飼育所

2棟を直列につないだ構造。土室電床育だったろう。

(群馬県富岡市田篠)

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中井稚蚕共同飼育所。個人の敷地に建っているようで、いまは個人の倉庫になっている。

屋根や高窓の様子をみると土室電床育によくある構造だが、壁はモルタル塗りになっていてブロック電床育を思わせる。秋間地方の小日向荒井の飼育所と似たパターンだ。こうした飼育所は、はじめ土室で作られたものが、室の部分をブロックで作り直したものではないかというのが私の推理だ。

建物は、2棟の飼育所を継ぎ足したような構造。

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壁を見ると、土室に特有の換気用の土管が並んでいる。手前の棟に6室、奥の棟に6室分の通気孔だ。これが両側にあるわけだから、土室であれば24室分の規模である。

一般に、土室の横幅は120cm、ブロック室の横幅は360cmという規格だから、もしブロック電床育に改装されていたとしたら全体で8室の飼育所という換算になる。

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土室の通気孔には木材の栓がしてあった。

土室がまだ内部で炭火を使っていたころにはこの通気菅で酸素を取り込んだのだろうが、電床になってからはあまり意味はなくなっていったはずだ。

そもそも内部は消毒された空間であり、ネズミが出入りしそうな管は防疫的に望ましいとも思えない。

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より新しい素材の栓もある。断熱素材で出来ている。これは稚蚕飼育所用のものではなく、煙突用の素材だろう。

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宿直室と思われる部屋の下には、換気用の窓がある。

これは地下室の換気と明かり取りだ。

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南側の壁。

棟と棟のつなぎ目にトイレらしきものがある。

飼育室の途中にトイレがあるというのは不自然だ。奥の棟は建て増しだったのだろう。

(2008年07月12日訪問)