多胡村133号墳から次の稚蚕飼育所へ向かう途中、めずらしいものが目に入った。葉たばこの乾燥室である。本サイトでは初出になるので、少し詳しく説明する。
たばこは、ナス科のタバコという植物の葉を発酵、乾燥させて刻んだものだ。原料の葉を「葉たばこ」という。葉たばこはいまも国内で生産されている。
日本で生産されている葉たばこは大別して在来種、黄色種、バーレー種の3種類。種類ごとに、味を出す目的、火もちをよくする目的など、機能が違っていて、紙巻きタバコになるときにはブレンドして使用する。
葉たばこ3種類のうち、在来種とバーレー種は緑色の葉を収穫し、ビニールハウスなどで比較的低い温度で長時間かけて茶色になるまで発酵、乾燥させる。それに対して黄色種と呼ばれるグループは、畑で葉が黄色く熟成するため、高温の乾燥室で短時間で乾燥することができる。
ここで紹介するタバコ乾燥室は、すなわち黄色種を乾燥するための設備なのである。
現在、国内では黄色種は共同乾燥施設で機械式の乾燥機にかけている。私の知る限りでだが、2012年時点で写真のような乾燥室で黄色種を乾燥している農家はないと思う。土蔵の乾燥室が使われていたのは昭和40年ごろまでとされている。稚蚕共同飼育所と同じように産業遺跡なのである。
なお、黄色種はアメリカを起源とする品種であるため、タバコ業界では「
ベーハ小屋について詳しく研究したら、それだけでサイトがひとつ作れてしまうほどのテーマになる。本サイトでこれまでベーハ小屋の紹介が遅れてしまっていたのは「手を付けたら大変なことになりそう」ということもあったからなのだ。私が本格的に稚蚕飼育所について調べ出したころ、四国では「ベーハ小屋研究会」が設立された。実は私はその古参の会員であり、徳島支部長を拝命している。(2012年現在は、群馬支部長。)
さて、写真のベーハ小屋だが、形式はたぶん大阪式、屋根は桟瓦葺き、壁面は下見板が水色に塗られているのがめずらしい。下屋が三方についているのも特徴的だ。雨天でも火力の管理や、小窓からの内部のチェックなどがやりやすかっただろう。保存状態のよいベーハ小屋だった。
(2008年12月28日訪問)