陽も傾いたことだし、ぼちぼち今日の飼育所巡りは終わりにしようかと帰りかけた途中、多比良集落内で途方もない巨大蚕室を発見。
北関東の養蚕農家の母屋は巨大で、その典型的な平面は奥行き5間×間口10間である。ところが、この蚕室は5間×18間という、ものすごい大きさ。単一の蚕室として、私がこれまでに見たものでは最大だ。
この多比良という集落は、葉たばこと養蚕が盛んだったところで、大きな養蚕農家や、大きな蚕室も目立つ。だが、これは別格だ。
巨大建造物恐怖症(ダムやタンカーなどの巨大な人工物が怖いという恐怖症)の人が見たら、取り乱してしまうのではないかと思われるほどの大きさ。
切妻の高いところに窓があるので、おそらく内部は3階になっていると思われる。
この建物は、共同事業などではなく、1戸の養蚕農家が建てたものだという。
道路は建物の2階フロアの位置にあり、2階には出入りできない引き戸もある。道路側から桟橋のようなものを掛けて出入りしたのだろうか。
機会があれば、この蚕室の持ち主には話を聞いてみたいものだ。
巨大蚕室と道を挟んで反対側には、共同の収繭所があった。
繭の出荷では、まず農家で選繭(不良繭を除去)し、繭袋という木綿の袋に詰めて収繭所に集められる。収繭所では、選繭台というテーブルの上でもう一度選繭をして、袋詰めしなおす。ダブルチェックになっているのだ。その後、各戸ごとに出荷重量をはかり、製糸工場へ運ばれるという手順になっている。
壁には「昭和55年度 養蚕近代化促進対策事業 多比良繭流通合理化施設」とあった。上引田の壮蚕飼育場と同じ予算で建てられたものだとわかる。
(2008年12月28日訪問)